公益社団法人日本武術太極拳連盟

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ゆったり体操
「介護予防のための 太極拳ゆったり体操」  福島県喜多方市は「太極拳のまち」を宣言した平成15年度から、太極拳をより安全かつ介護予防効果の高い体操に改良し、体操の介護予防効果について長期的に検証をしてゆく事業に着手しました。
喜多方市と、福島県立医科大学医学部公衆衛生学講座、会津保健所、体操作成検討委員会、ワーキンググループなどが協働して、太極拳を取り入れた体操が作成されました。
 平成17年度・18年度には厚生労働省から老人保健推進事業の補助金を受けて、要支援、要介護1の認定を受けた人を対象として体操教室を実施し、その効果を検証しました。平成18年度には、引き続き検証作業を進めてゆくとともに、体操教室を実施しながら、高齢者の感想等を活かし、安全でより負荷のかかる体操となるよう、二度の改良を加えてこの体操を完成しました。また、この体操を速やかに高齢者の介護予防に活かすために、普及システムの基礎を築き、普及を進めてきました。
 平成19年9月には、この体操を「介護予防のための太極拳ゆったり体操」と名づけたDVDの初版が発行されました。
 「ゆったり体操」は、現在、喜多方市によるサポーター講習会などが繰り返し、開催されて、全国に普及が進んでいます。
 日本連盟は、体操の作成段階から作成検討委員会に加わり、この事業に協力してきました。
 以下は、体操作成検討委員会委員長の福島県立医科大学医学部公衆衛生学講座教授安村誠司先生に、この体操の特徴を説明していただいたものです。

「太極拳ゆったり体操」で、ゆっくりしっかり健康づくり 自宅でも、一人でも、安全に、気軽に・・・
それが「太極拳ゆったり体操」の特徴です。
1.どのように体操を作成したか、この体操を作成した経過
 皆さんご存知のように、太極拳はもともと中国に古来伝わる伝統武術の一つです。武術の一つでありながら、現在では養生法、つまり、健康法としても良く知られています。運動、体操として中国のみならず、健康のために太極拳を行っている人が大変多くなっています。70歳以上の高齢者が4ヶ月間太極拳を実施することで転倒の発生を半減できたと報告がアメリカから発表され、転倒の予防対策として太極拳がにわかに注目されるようになりました。
 太極拳のこのような効果を介護予防に活用できないかと考え、大極拳の特徴的な姿勢や動作等を取り入れた体操を作成することにしました。

2. 体操の特徴は? どのような効果があるか
 太極拳を一つの運動と考えた場合に、以下のような特徴が挙げられます。
① 姿勢の保持、② 連続した動作、③ ゆったりとした動作です。これらの特徴を取り入れて、やや虚弱な高齢者を対象として、要介護・要支援にならないように介護予防を目的として体操を作成しました。この体操は、身体機能の衰えを防ぐとともに、続けることにより身体機能を回復させることが目的です。座って行うことも、立って行うこともできて、自分の体力に合わせて強度を変えることができます。
この体操を3ヶ月間実施した結果、座っている状態から、立ち上がるまでの時間が有意に短くなり、開眼で片足で立っている時間が延長する傾向を認めました。このように、この体操はバランス機能の改善に有効である可能性が示されました。

3. 介護予防における運動の意義
 介護保険制度が導入されて以来、要支援・要介護認定の高齢者数は増加の一途をたどっており、自立している高齢者が要支援・要介護にならないこと、つまり、予防が大切です。平成18年4月からの改正介護保険法で介護予防事業が導入されました。この介護予防には、運動器の機能向上、口腔機能の向上、栄養改善、閉じこもり予防・支援、うつ予防・支援、認知症予防・支援の6つの事業からなっています。年をとるほど、誰でも身体の機能は低下していき、動かさないことによる状態、廃用症候群(生活不活発病)は高齢になるほど要支援・要介護の最大の原因になっていきますので、運動による身体の機能の維持がとても重要です。

4. 継続に必要性
 運動は一時的に行ってもその効果を挙げることができません。週に3~5回、1回30分以上の運動を実施することが心肺機能を維持するために推奨されています。どのくらいの運動で介護予防の効果があるかについては、十分に明らかになっていませんが、少なくとも週に2回以上、1回30分以上の運動をすることが健康の維持のためには最低限必要でしょう。
 運動の重要性はわかっていても、続けることはなかなか難しいのが現実でしょう。器具を使わなければいけない運動では、その器具がある場所でなければできませんから、自宅で同じことをすることは困難です。また、従来の運動の多くは単調な動作の繰り返しが多く、それ自体が楽しいというよりも、「身体に良いと思ってやっている」、または、「やらないといけないと思っている」、など義務的にやっている方も少なからずいらっしゃいます。
 長期に継続できるために、この体操は、音楽に合わせて、また、映像を見ながら、「自宅でも」、「一人でも」、「楽しく」、「安全に」、「気軽に」できるように作られています。

筆者プロフィール:
安村 誠司(やすむら せいじ):
1984年 山形大学医学部卒業
1988年 山形大学大学院医学研究科修了(医学博士)
1988年 東京都老人総合研究所 客員教授
1993年 山形大学医学部公衆衛生学講座 講師
1994年 山形大学医学部公衆衛生学講座 助教授
2000年 福島県立医科大学医学部公衆衛生学講座 教授
専 門 老年学(高齢者保健)、地域保健、疫学
著 書 「地域保健におけるエビデンスに基づく骨折、骨粗鬆症予防ガイドライン」
(財団法人日本公衆衛生協会、2004年、共著)
「地域ですすめる閉じこもり予防・支援」(2006年)など多数
受賞その他
1996年 日本公衆衛生学会奨励賞受賞「地域における転倒・骨折の予防に関する研究」
2006年 日本学術会議連携会員

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