震災被災地の各県連盟からの報告②

震災被災地の各県連盟からの報告②

東日本大震災で被災された地域の県連盟から被災地・避難所生活の状況などを寄せていただいた。(2011年4月30日現在)

【掲載:2011年05月15日】

岩手県連盟    加盟/17団体

──現在,震災被害が比較的少なかった内陸部で,少しずつ教室が再開されています。会員どうし久々に顔を合わせ,お互いの無事を確認してほっとするものの,ご家族や知人,職場の方々などの被災状況も聞こえてきて,あらためて被害の大きさを感じています。

震災被害が特に甚大だった沿岸部の陸前高田市と大船渡市では,被災者の方々がそれぞれ別々の避難所で生活していたり,仮設住宅に移られたり,携帯電話が通じにくかったりして,すべての会員の方々と連絡がとれているわけではありません。

県連盟加盟団体の「陸前髙田太極拳クラブ」では4月6日現在,55人の会員のうち8人の方がお亡くなりになり,1人が行方不明,22人の方が避難中との情報が入っています。また自宅が流された方,全壊・半壊した方,自家用車が流された方,職場を失った方などが大勢おられ被害状況は深刻です。

また,沿岸部,大船渡市の加盟団体「おおふなと放松塾」(会員20人)から文書で以下の様な震災状況報告が県連盟に届きました。

*    *    *    *    *    *    *

──「幸いにも会員は全員無事でしたが,家,車を流失された会員が2人,親,妹を亡くされた会員が3人いらっしゃいます。震災から1カ月半が過ぎ,そろそろ太極拳がやりたいという声があがり,5月の連休明けから野外の公園でとりあえず始めようということになり,現在会員どうし連絡を取り合っています。皆で力を合わせ,頑張っていきますので,今後ともよろしくご指導をお願いいたします」 ──

県連盟では引き続き被災の情報確認を行っています。また,4月16日には,急きょ常任理事会を開催し,今後の事業や岩手県連盟独自の義援金対応についても話し合いました。

2011年4月30日
高橋喜子・岩手県連盟事務局長
宮城県連盟    加盟/11団体

─「日常を取り戻すために」を合言葉に。少しずつ情報も入ってきておりますが,やはり,県外に避難されている方々が大勢いらっしゃるので連絡がとれなかったり,正確な情報を得るのにも限りがあったりする状況です。2人の会員の方が行方不明になっています。家屋を流失された方もいらっしゃいます。仙台市内のライフラインはかなり回復していますが,海沿い田園地帯ではまだ水道・ガスなどの復旧が遅れているところもあり,復旧にも差がある状態です。

そんななかで,日常生活を送るすべを全て失った方々のために県連盟として何ができるかを考えています。震災で亡くなられた方の四十九日忌にあたる4月28日すぎに総会を開いて皆さんで知恵を出し合いたいと思います。3月11日の地震から無我夢中ですごしてきました。今は全国からのご協力のおかげでありがたいことに,物は十分にあります。「日常を取り戻す」ことが次のステップですが,まだまだ気の遠くなるような時間と努力が必要です。

そのなかで仙台市内の会員さんから聞こえてきたのは「太極拳をやっているおかげか,食料など両手に重い荷物をもって,歩いて買い出しに出かけたり,水運びで階段を上ったりがそれほど苦にならなかった」「今まで続けてきた太極拳をまた始めて日常を少しでも取り戻したい」……など。仙台市内では5月連休明けから有志の会員の方々が中心となって会場を探して太極拳青空教室,子供教室を開催されることになっています。

避難所で生活されている方々の健康を心配して身体を少しでも動かしてもらおうと,ストレッチ体操,太極拳をというお話もありますが,実際には避難所ではなかなか難しいこともあるようです。まず,スペースの問題。一人当たり畳1畳分のスペースもないような状況もあるようです。それから,昼間は身体を動かせる避難住民の方々はほとんど外でがれきの始末,自宅の片づけなどをされて避難所には不在。昼間おられるのはほとんどが高齢者,身体を動かせない方々だそうです。

また,大震災の影響はあらゆる方面に波及することを実感しています。宮城県・仙台市では来年2012年秋,「第25回ねんりんピック全国大会」を開催することになっています。現在のところ開催予定ではありますが,県が行う各団体への意向調査の結果によって開催はどうなるのかと心配しています。岩手県では2016年の国体開催を辞退されたと聞いています。県体協からの助成金関係などで,全ての事業の元になる予算も県連盟として今は立てられない状況です。

2011年4月27日

鹿島眞理・宮城県連盟事務局長

山形県連盟    加盟/4団体

──県下では被災された会員はおりません。
福島県などから避難されてきた方々のための避難所が山形市内の体育館に設置されています。県全体では41カ所の避難所に宮城県,福島県からの避難住民715人(4月27日現在)が生活しています。これは公共施設のみで,このほかホテル・旅館・親戚・知人宅に相当数の方が避難しているようです。 4月24日に開いた県連盟総会で話が出ましたが,山形県太極拳協会の城南支部の会員の方が,米沢市内の避難所で太極拳を教えて,避難住民の方々に喜ばれているそうです。

 

2011年4月28日

岡崎一雄・山形県連盟理事・事務局長

福島県連盟    加盟/22団体

──県連盟加盟団体のリーダーの方々とは頻繁に連絡をとっています。遠くの各地に分散して避難所生活を送っていた津波と原発事故の被災者の方々は徐々に近くの避難所やホテル・ペンションに戻ってこられているそうです。会報4月号でも紹介されていた福島市・あづま総合体育館では練功を行っている会員もおられます。避難指示によって二本松市の避難所で生活しておられた,なみえ武術太極拳友会の代表のかたは,現在は猪苗代湖のペンションで避難生活を送られています。太極拳の練習場所が近くにないため福島市または会津若松市まで1時間以上かかっても会員のための練習会場を探しているという状況です。 原発事故により避難されている方はしばらくは自宅にもどれないでしょうから,仮設住宅入居を待っている状態です。しかし,親戚を頼って東京に避難された方々がそこの地元の太極拳団体で練習をされているという話も聞きました。

喜多方市では避難所となっていた押切川公園体育館で4月25日から会員による「朝練」が始まったそうです。同体育館で生活されている避難住民の多くは2次避難場所の旅館やホテルに移動されましたが,まだ数人の方が生活されているとのことです。

2011年4月27日

遠藤淑子・福島県連盟理事長

茨城県連盟    加盟/9団体

──東日本大震災の被害状況の報告が徐々に入ってきています。幸いにも,県連盟の会員で亡くなられた方,怪我をされた方はいらっしゃいませんでしたが,余震で被害を受けた自宅をとり壊さなければならない方もおいでです。東北地方の惨状を思うと言葉もありませんが,少しでも協力できるよう募金活動を行っています。

3月26日に予定していました,「第3回いばらきねんりんスポーツ大会」が,会場のグリーンスポーツセンターが被災したため使用できない状態となり,中止となりました。その参加費を理事会の決定により,日本連盟の義援募金に拠出することになりました。県連盟加盟の9団体662人です。微々たる金額ですが,日本連盟に託しますので,よろしくお願い申し上げます。(役員一同)

以下は,今日現在(4月28日)の会員の被災状況報告です。家屋の全壊=4件:日立市2人,神栖市1人,北相馬郡利根町1人,液状化=3件,一部損壊=100件を超えると予想されます,そのほとんどが屋根瓦の落下。このほかブロック塀の倒壊,外壁の亀裂・落下などの被害が寄せられています。

そんな中で,少しずつ教室も再開され,仲間の顔を見るだけで安心したり,太極拳ができる喜びを感じたり,以前よりもいっそう絆が深まったような気がします。

まだ,大きな誘発地震があり,安心していられる環境ではありません。4月18日の時点で水道が復旧していない地域もあるとの報告も寄せられています。

原発事故の放射能の問題はほんとうに深刻です。(県連盟事務局のある)取手市は南相馬市と災害協定を結んでいて,市内の施設に160数人の被災者の方が避難されてきていました。現在は帰宅された方もいらっしゃいますが,100数人が,競輪選手の施設に入っていらっしゃいます。私たちも自治会を通して物資の支援をしました。取手市に対して,太極拳でお手伝いできることがありましたらと申し入れをしていますが,今のところ要請はありません。

地震でやれやれと思っていたら,4月25日,取手市が雷と突風にみまわれ,プレハブの屋根が飛ぶ被害がありました。自然の力の恐ろしさを思い知らされました。震災後の屋根の修理がいつになるのかの見通しもつかず,いまだに多くの屋根に青いビニールシートがかけられたままです。

でも私たちは太極拳から力をもらっています。皆で頑張っていきたいと思います。

2011年4月28日
塚原加代子・茨城県連盟事務局長
新潟県連盟    加盟/25団体

──東日本大震災で避難されている方が新潟県下に約8500人いらっしゃいます。県連盟加盟団体のうち,避難所で生活されている方々の運動不足にともなうエコノミークラス症候群などを予防するために太極拳を取り入れた運動ボランティアを行っている2つの団体,三条太極拳協会と長岡太極拳協会の活動を報告します。(新潟県連盟事務局)

◆三条市・三条太極拳協会「太極拳で健康管理のボランティア」4月4日から期限設けず

3月11日に発生した東日本大地震は多くの犠牲と多大な損害をもたらし,加えて福島原発事故により,大勢が緊急避難を余儀なくされた。その中で新潟県三条市には福島県南相馬市から600余人の避難者が緊急移住されている。

三条市の三条太極拳協会(久住正也会長,会員150人)は避難者の滞在が長期間に及ぶことを懸念し,市当局へボランティア活動として,太極拳を通じて避難住民のみなさんの健康管理に役立てることを申し出たところ,市側は「ぜひお願いする」として,この申し出を受け入れた。

南相馬市からの避難者600人は三条市内に設けられた4か所の避難所(福祉センター・体育文化センター・ソレイユ三条・サンファーム三条)で生活している。三条太極拳協会(以下,三条協会)はボランティア活動として,4月4日から無期限で,4つの避難所の避難者全員を対象に,毎日午前10時から約40分間,軽いストレッチ,練功十八法,入門太極拳などを行っている。

三条協会の指導員18人が,1組4~5人の4班体制を編成し,4カ所の避難所をローテーション方式でまわって健康管理ボランティア活動に従事している。指導員のほかに,三条協会の一般会員3~4人が各会場に参加するなど三条協会全体の意識も充実している。活動する指導員は全員がボランティア保険に加入している。

避難所住民の方々の反応は,最初腰が重かった人も1人,2人と腰を上げ,運動したあとの爽快感もあるためか,各会場とも15人ほどの参加が定着している。今では,各会場でリーダー的な人も現れ,積極的に参加を促し,活動を盛り上げている。

南相馬市太極拳協会傘下の浮舟クラブの拳友,中野氏や避難者の佐竹紀氏らのバックアップも得て,円滑なボランティア活動を実施している。

「縁あって三条に身を寄せました。良いチャンスなので太極拳をおみやげにします」と言ってくれた参加者の言葉が印象的だった。

(久住正也・三条太極拳協会会長)

新潟県三条市の三条太極拳協会による
太極拳ボランティア活動の様子

◆長岡市・長岡太極拳協会「いつもの体育館で運動ボランティア」

長岡太極拳協会(以下,長岡協会)が毎週教室で使用している長岡市北部体育館が3月19日から東日本大震災の避難所となり,福島県南相馬市の方々約200人が避難生活を送っておいでです。これまで中越地震や中之島の洪水を経験した私たちは様々な思いがあり,避難所の様子を見に行ったおりに,運動不足による避難住民の方のエコノミークラス症候群が心配だという話を聞き,早速,長岡協会の指導部(6人)に参加を呼びかけ,毎週木曜日に運動ボランティアを実行することにしました。

ボランティアをするうえで気をつけていることがあります。①全員が休んでいる大アリーナで行うため,体調の悪い方がまわりにいないか確認すること(迷惑になってはいけない)。②参加者それぞれの体調に合わせて絶対無理をさせないこと。③体操は,あまり動けていない方を対象にすること。

まず初日に,困ったのは会場に身体を動かせるスペースがなく,布団の上で動いていただくしかなかったこと,説明がなかなかことばだけでは伝わらないことなどです。運動の内容は,足マッサージ,座ったままのストレッチ,布団の上に立って行う養生功(大地回春)です。

終了後は被災者の方々からお話を聞きました。皆さん堰を切ったように,それぞれの指導員に話されていました。実際に身体を動かした時間は20~30分程度でしたが,「身体が温まり軽くなった」と言っていただきました。毎週,体育館に通うなかで皆さんが少しずつ元気になられ散歩やバドミントン,体操等で身体を動かしていらっしゃるのを見聞きして安心しています。様々なボランティアの方々のおかげだと思います。

現在は,地元に帰られたり親せき宅に行かれたりで,80人くらいです。太極拳動作の起勢・手揮琵琶などを行い,立てない方も手と足をその場で同じように動かしていただいています。

ボランティアで行き始めたのですが,いつも帰るときには,何かいただいたような気持になります。この大きな災害を機に,人と人が助け合う「和」が広がっていくことに期待を寄せています。

 

中村祐子・長岡太極拳協会常務理