「第9回アジアジュニア武術選手権大会」実施報告

金メダル5個,銀メダル8個,銅メダル8個,全員入賞の大健闘!

2017年9月17~20日,韓国・亀尾市で活躍


アジア武術連盟(WFA)の主催で,9月17~20日に「第9回アジアジュニア武術選手権大会」が開催された。大会には,アジア19ヵ国から409人(套路競技は365人)の選手が集まり,会場の朴正煕体育館では連日熱戦が繰り広げられた。

日本連盟では,ジュニア日本代表選手14人と監督・コーチ5人,帯同審判員1人の計20人を派遣した。

競技は午前と午後に分かれ,表彰式も含めると深夜まで続く厳しい日程となったが,日本からの応援団も最後までジュニア選手たちに声援を送り,選手・コーチたちと一丸となって大会に挑んだ。

日本ジュニア武術隊は期待に違わぬ活躍を見せ,現地だけでなく日本からの応援も力に変えて,初日からメダルラッシュが続いた。

最終的に日本隊は合計して金メダル5個,銀メダル8個,銅メダル8個を獲得し,全体でメダル獲得数第3位,全員入賞という大健闘の結果となった。

本事業は,(公財)日本オリンピック委員会(JOC)選手強化NF事業助成を受けている。

詳細な成績の一覧はページ下部に掲載する。



素晴らしい成績を収めた日本代表選手団一行

監督レポート:谷川 大(選手強化委員会委員長)
- 学拳容易改拳難 -

韓国・亀尾市で実施されたアジアジュニア大会で,日本チームは良好な成績を残すことができた。亀尾市は軽工業を中心とした都市と聞いていたが,宿泊先は生活用水池となっている湖からの登山口にあたり,高原リゾートといった,たいへん静かな環境であった。またスポーツの街を宣言しており,会場も含めスポーツ施設も充実したものであった。遠隔地で開催される国際大会では,C組の派遣を見送ることもあるが,今回はA・B・C組のすべてにエントリーした。

成績自体は大変素晴らしいものであったが,その中には多くの課題も見られた。今回のレポートの表題にもしたが,やはり基礎を正しく学ぶことは何より大切である。一度身に付けてしまった悪しき習慣を代表に選出されてからの短期間で正していくことは難しい。普段の訓練にあたられるコーチの皆さんには基本訓練が単なる準備運動になってしまわないように注意を払っていただきたい。強化委員会の訓練でなくてはできないのではなく,むしろこのような部分を日常的に厳しく訓練することこそが,選手が大成する根本的な課題となる。国際大会での規格部分における減点は,失敗よりもむしろ習慣的なものが多いのだということを改めて述べておきたい。

2010年シンガポールで開催された世界ジュニア大会で他国選手にドーピング違反者が出て以来,ジュニア大会でもドーピング検査が行われるようになっている。今回の大会ではドーピング検査の対象となる選手はなかった。今回日常の使用薬を記入する用紙を事前配布したが,残念ながらこの部分についての意識は大変低いものであった。禁止薬物が毎年改定され,その対象物は細分化されている。和漢薬についてはその成分がわかりにくく,多くの方が日常服用されるものにも禁止薬物が含まれており,運動選手としては十分な注意が必要である。強化委員会ではジュニア合宿時にドーピングに関する講習を実施している。使用可能薬物のリーフレット配布を行い,内容も青少年向けの分かりやすいものとしているが,今回はご家族の皆さんの協力が必要であるということを痛感した。今後連盟HPなどを通じて注意喚起をしていく予定である。

ジュニア大会とはいえ,選手は過去の国際大会に参加経験を持つ者もおり,他国の選手と親しく交流する姿も見られた。現在のシニア選手の多くもジュニアからの経験を活かして実力を伸ばしてきているだけに,今回の選手にも将来の日本を代表する選手としての活躍が期待される。また,各国のコーチ陣も同年代であり,かつては代表選手として国際大会に参加し,活躍した者も多く,こちらも旧交を温めていた。このような状況を生かし,将来的に選手,コーチ共に充実したものとしていくことが求められる。強化委員会としても次代の指導者の育成は急務であり,計画的育成に取り組んでいきたい。

最後に応援に来て下さった父兄,コーチの皆さん,日常の訓練を担当される指導者の皆さん,選手のご家族の皆さんに心より感謝申し上げたい。



会場の「朴正煕体育館」外観


大野雅也選手・棍術1位


蝦名冬馬選手・太極剣2位


坂本蓮選手・刀術2位


貴田菜ノ花選手・剣術1位


池内佳奈選手・刀術1位


毛塚来美選手・太極剣3位


鎌田慎ノ介選手・剣術1位


宮尾宙尚選手・太極剣3位


古川萌華選手・槍術2位


中村里香選手・刀術,棍術3位


高山蓮選手・棍術1位


泉更紗選手・長拳,剣術2位


大野雅也選手の棍術の演武


池内佳奈選手の刀術の演武

 

日本代表選手成績一覧

  区分 性別 種目 氏名 所属連盟 出場種目と成績
1 A組 太極拳 蝦名 冬馬 北海道
太極拳4位,太極剣2位
2 長拳 坂本  蓮 埼玉県
長拳5位,刀術2位,棍術5位
3 長拳 大野 雅也 千葉県
長拳2位,刀術3位,棍術1位
4 太極拳 毛塚 来美 栃木県
太極拳5位,太極剣3位
5 長拳 貴田菜ノ花 兵庫県
長拳2位,剣術1位,槍術3位
6 長拳 池内 佳奈 埼玉県
長拳4位,刀術1位,棍術2位
7 B組 太極拳 宮尾 宙尚 新潟県
太極拳5位,太極剣3位
8 長拳 鎌田慎ノ介 北海道
長拳6位,剣術1位,槍術7位
9 長拳 中村 里香 千葉県
長拳8位,刀術3位,棍術3位
10 長拳 古川 萌華 岩手県
長拳3位,剣術3位,槍術2位
11 C組 長拳 小堺 慎平 新潟県
長拳13位,棍術4位
12 長拳 高山  蓮 栃木県
長拳11位,棍術1位
13 長拳 泉  更紗 兵庫県
長拳2位,剣術2位
14 長拳 泉  小雪 兵庫県
長拳13位,剣術5位
15 役員・コーチ 谷川  大 選手強化委員会 委員長
16 李  自力 同 コーチ
17 神庭 裕里 同 コーチ
18 高山 宗久 同 コーチ
19 丹井  均 同 コーチ
20 国際審判員 三船  英 審判委員会 委員

 

順位 国・地域名 合計
1 中国 14 14
2 中国香港 8 9 10 27
3 日本 5 8 8 21
4 ベトナム 5 4 9
5 シンガポール 4 8 2 14
6 マレーシア 3 7 3 13
7 イラン 3 5 8 16
8 中国マカオ 3 1 5 9
9 フィリピン 3 3 6
10 韓国 2 3 2 7
11 インドネシア 1 3 3 7
12 中華台北 1 1 2 4
13 ブルネイ 1 1 2
14 ウズベキスタン 1 1 2
15 カザフスタン 2 3 5
16 スリランカ 1 1
17 インド 3 3
  合計 54 53 53 160