公益社団法人日本武術太極拳連盟

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大会・イベント

「第9回アジア武術選手権大会」(台湾・桃園市)

長拳種目と太極拳種目で,3個の「銀」メダル獲得


【掲載:2016年10月15日】

9月1日から5日にかけて,台湾・桃園市で開催された「第9回アジア武術選手権大会」には,アジア諸国23カ国・地域から246人のトップ選手が集結した。

日本連盟は今大会に,男子選手6人,女子選手5人,監督コーチ3人,国際審判員1人の合計15人を派遣した。本事業は,(公財)日本オリンピック委員会(JOC)選手強化NF事業助成を受けている。

このアジア武術選手権大会は隔年開催を規定しているが,アジア競技大会が開催される年は実施されないため,実質4年ごとの開催となっている。2年前の「第17回アジア競技大会」(韓国・仁川市)では,大会期間の初日に最初のメダルを獲得したことで話題となった長拳の市来崎大祐(元)選手と太極拳の内田愛(元)選手が,それぞれ銅メダルを獲得した。

今回のアジア選手権では,男子剣術で大川智矢選手,女子槍術で山口啓子選手,男子太極剣で荒谷友碩選手が,みごと銀メダルに輝いた。套路競技種目別の全成績を次ページに掲載する。また,国・地域別のメダル獲得数順位を表にした。


競技会場となった桃園アリーナ正面

監督レポート
 孫建明選手強化委員会ヘッドコーチ 

4年ぶりのアジア各国は,驚くほどの進歩を遂げていた。アジア選手権大会は,世界でトップクラス,高レベルの大会。特に今回は,出場した多くの選手がB組で2.6点以上を獲得するレベルに進化していた。その中で日本人選手はほとんど目立たず,それどころか遅れている印象が強く残る大会であった。

アジア各国が次々とプロ体制のチームに変わる中,日本チームを率いて世界を追いかけて来た。春は現役の中国人コーチと選手を招いての合宿,夏と冬には北京合宿が実現し,そのかいあって世界に追いつき,第7回,第8回大会では金メダルを獲得することができた。

第9回大会の今回,日本チームは年齢の若い選手が半数,初国際大会4人の新しい構成。常にメダルを獲得してきたベテラン選手たちが引退し,唯一小島選手が出場した。怪我に悩まされながらも頑張って来たが,以前の高評価もこの2~3年間で遅れてしまったと言わざるを得ない。日本チームに進歩がない訳ではなく,各国の選手たちのプロとしての訓練が,差を大きく広げたと考えられる。

国内で全日本選手権大会が行われた7月,各国は既にこの大会に向けた合宿中だった。日本チームが中国での事前合宿を計画した時には,福建にも北京にも,中国代表チームをはじめ多くの外国勢が長期の訓練に入っていて,受け入れ余地がないと断られ,各国がアジア選手権大会を重視して早くから準備していた事がわかった。

日本人選手はアマチュア環境の中で頑張ってはいるが,全種目ノーミスの選手が1人もいない現状は,大会に向けた準備不足と考えられる。難度の完成に余裕がなく自滅してしまい,本番の精神的な面が弱く,やっとの印象を受けた。日本人はまだまだ角度の問題が大きい。

逆に他国の選手は,跳躍難度の高さ,完成度,男子だけでなく女子も身体能力の高さが目立った。男子選手では,武術競技では出遅れていたインドを含め,720度の跳躍を非常に多くの選手が取り入れていて成功率も高かった。女子選手でも540度を軽くこなす事が当たり前になっていて,他国の選手は難度に余裕があることが一番の印象。

また,套路の構成,スピード,パワー,体力,それに演技レベルの度合いが各国とも非常に上がり,中国選手が目立たないほどにレベルが近付き,点数の差も小さくなってきた。従来,日本の選手は規格が正しい事で有名であったが,他国の規格レベルが上がった今は特徴ではなくなり,套路が単純でパワーでも見劣りする事が目立ってしまった。


出場選手たち。左から村上僚,齋藤志保,荒谷友碩,柏熊結姫,大川智矢,
山口啓子,別當響,小島恵梨香,毛利亮太,阪みさき,朝山義隆の各選手

具体的な問題点

1.長拳では,身体能力が外国選手より劣ることが一番の問題。市来崎選手の時代よりまだ一歩,各国は既に進歩している。身体能力を上げ,その後で套路の構成を考え直す必要が大きい。ぎりぎりで難度を完成している現状のままで套路構成だけ変えても,能力が足りない。コートを大きく使い様々な動作と跳躍をこなすための体力が大問題。さらに器械を持って難度の高い完成を求めるには,身体能力と体力の格段の進歩が必要。

2.南拳では,今回初めて男女とも2人ずつ出場したが,アジアではやはりパワーで見劣りする事がはっきりした。他国の選手が高さとパワーのある旋風脚や,バク宙や盤腿を次々に決めると場内が盛り上がる。日本人の男子の跳躍難度はわりと高く,決まってはいるが,勢いのある独特の表現力が全く足りない。顔が別人になるほど強烈な演技と,次々に難度を決める雰囲気,独特のパワーと,套路の構成も必要だが,日本人の表情はとても薄く,全てが単純すぎる。外国勢が中国のレベルにどんどん近付いているため,日本人の遅れが目立つ事になった。

3.太極拳のレベルは唯一評判が良いが,今回の選手は3人とも国際大会本番の経験をもっと積まないといけない。難度の完成度の問題が大きく,まだ安定できない事が通用しない理由。

これらの改善は,日本の環境ではすぐに実現できるとは考えられない。すぐに必要な改善は選手本人の考え,気持ちを改める事からである。

一流の選手を目指すのであれば,生活と練習の両立を実現し,心が負けないように目標を持って実際に行動をしないといけない。選手は皆,大会の度に悔しいという言葉を使うが,アジア,世界に負けない気持ちを常に忘れず実行を続けるべきである。


銀メダリストの3選手。(左から)荒谷友碩,山口啓子,大川智矢の各選手

日本代表選手成績一覧

No. 種目 氏 名 所属団体 出場種目と成績順位
1 長 拳 別當  響 大阪府連盟
長拳15位・刀術5位・棍術13位
2 長 拳 大川 智矢 東京都連盟
長拳9位・剣術2位(銀)・槍術4位
3 長 拳 山口 啓子 東京都連盟
長拳9位・剣術6位・槍術2位(銀)
4 長 拳 柏熊 結姫 東京都連盟
長拳15位・剣術9位・槍術6位
5 南 拳 毛利 亮太 大阪府連盟
南拳13位・南刀8位・南棍11位
6 南 拳 朝山 義隆 大阪府連盟
南拳15位・南刀16位・南棍6位
7 南 拳 小島恵梨香 滋賀県連盟
南拳5位・南刀5位・南棍4位
8 南 拳 阪 みさき 大阪府連盟
南拳4位・南刀9位・南棍10位
9 太極拳 荒谷 友碩 千葉県連盟
太極拳10位・太極剣2位(銀)
10 太極拳 村上  僚 東京都連盟
太極拳15位・太極剣15位
11 太極拳 齋藤 志保 岩手県連盟
太極拳10位・太極剣8位

参加国・地域別 獲得メダル数(套路種目)

順位 国・地域名 合計
1 中国 11     11
2 中国香港 3 3 5 11
3 中国マカオ 2 1 4 7
4 中華台北 1 4 4 9
5 マレーシア 1 4 3 8
6 ベトナム 1 2 3 6
7 イラン 1 2   3
8 韓国 1 1 2 4
9 ミャンマー 1 1 1 3
9 シンガポール 1 1 1 3
11 日本   3   3
12 インドネシア   1   1
13 フィリピン     1 1
  合計 23 23 24 70

 


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