「第7回アジアジュニア武術選手権大会」(フィリピン・マニラ)金4・銀2・銅6の好成績!

2013.8.8-11/フィリピン・マニラ 24カ国・地域から420人が参加

【掲載:2013年9月17日】

アジア武術連盟(WFA)が主催し,フィリピン武術協会主管による「第7回アジアジュニア武術選手権大会」が8月8~11日,フィリピン・マニラ市で開催され,アジア24カ国・地域から420人の選手と関係役員が参加した。


日本代表選手団(一部は競技のためにスタンバイ)

今大会は昨年(2012年)9月,中国・マカオで開催された「第4回世界ジュニア選手権大会」と同じ競技種目で行われた。套路競技は年齢別(A組=18~16歳,B組=15~13歳,C組=12~7歳)で実施された。また散打競技は体重別に男子8階級,女子4階級の12階級で行われた。

日本からは套路競技のA,B,Cの各年齢組に男女計12選手がエントリーし,監督,コーチの5人と合わせて計17人の代表選手団が派遣された。また帯同審判員として三船英国際審判員が参加した。

 

国際第三套路をアジアジュニア選手権で初採用

今大会の特徴は,昨年の第4回世界ジュニア選手権大会から10種目で採用された「国際第三套路」が長拳,太極拳,南拳でアジアジュニア選手権大会として初めて採用されたことである。

「国際第三套路」はA組年齢区分のジュニア選手のレベルアップを図るために,それぞれの種目でいくつかの「難度動作」を取り入れたもので,従来からある国際第一,国際第二套路に比べ,難度の高い規定競技用套路である。

今大会の日本選手団は,特に,A組の男女長拳選手の活躍が目立った。8月8日大会1日目の夜の競技で,男子A組長拳国際第三套路の種目において,別當響選手が,新套路を力強く,ノーミスで演じきって,日本に金メダル第1号をもたらした。別当選手は,翌日午前の男子A組棍術でも快調に仕上げて,2個目の金メダルを獲得。

8月10日大会3日目午前の競技で,大津こころ選手が,女子A組槍術で見事金メダルを挙げ,前日夜に獲得した女子剣術銀メダルに加えて有終の美を飾った。3日目夜の男子A組刀術競技では,絶好調の別当選手が3個目の金メダルを狙ったが,跳躍時に勢い余って刀が手から離れて放り出されるという大きなミスが出た。その動作の着地時に右膝を痛めたが,演じきって8位の成績となった。同じ種目で後半に出場した金澤慎治選手が,別当選手の事故を見て奮起し,見事1位となり,日本へ4個目の金メダルをもたらした。両選手の健闘を讃えたい。別當選手は,帰国後の検査で右膝前十字靱帯断裂の診断を受け,近く手術を行うことになった。早期の回復を祈る。

今大会は,金澤選手と大津選手の2人は過去のジュニア代表であったが,他の10人の選手はすべて初出場であった。それにもかかわらず,監督・コーチの指導のもとで,代表チームのメンバーとして一致団結して行動し,競技ではそれぞれが全力を尽くした。今大会での経験を基に,今後の活躍が期待される。


長拳国際第三套路1位,棍術1位の別當響選手

刀術1位の金澤慎治選手

女子槍術1位の大津こころ選手

 

■大会レポート────────────────
「第7回アジアジュニア武術選手権大会」に参加して
日本代表選手団監督
谷川大(日本連盟選手強化委員会委員長)

学校が夏休みの期間に当たる8月8日から11日ま
での間,フィリピン・マニラ市において「第7回アジ
アジュニア武術選手権大会」が開催された。

今回の大会もアジア各国から多くの選手が参加し
て,熱戦を繰り広げた。アジア地区は世界的にも武術
のレベルが高く,ジュニア大会とはいえ,その競争は
熾烈なものである。

今回の日本代表選手は4月に兵庫県尼崎市で行われたJOCジュニアカップ武術太極拳大会の成績をもとに一次選抜され,さらに最終選考会の結果選抜された男女計12人の選手によって編成された。ジュニア大会はA・B・Cの各年齢区分に男女それぞれ2人ずつの選手を派遣することができる。一方種目は太極拳・長拳・南拳の3種目であるため,毎年選手の選考に当たってはその年の最有力選手を選抜するようにしているが,同時に若い選手に経験を積ませることで,今後の国際代表へとつなげようということも考えられている。

日本チームは8月2日に東京に集合,3日,4日に本部研修センターで直前合宿を行い,8月5日に日本を出発。大会終了翌日の12日に成田に到着後それぞれの居住地に戻るというスケジュールで大会に臨んだ。

4日間の大会の中で選手はいずれも複数種目に出場するため,それぞれの選手は出場に向けてコーチの補助のもと,十分な準備を行い万全の態勢で出場できるよう努力した。しかし,レベルの高いアジア地区での大会だけに,すべての選手が望んだ通りの結果を得られたわけではなかった。最初の種目に失敗があった選手も,2種目以降はそれに影響を受けることなくよく頑張った。ジュニア選手にとっては少々厳しいことではあるが,毎回出場の参加者はこの点でも代表にふさわしいと感じている。

今大会では日本チームは金4,銀2,銅6を獲得し,全体としては素晴らしい出来であったと思われる。しかし,アジア各国が武術に力を入れて本格的な訓練に取り組んでいることは,毎年の大会を見て明らかであり,日本も現在の状況に満足していてはならない。今後,今まで以上に訓練態勢の充実と選手の計画的育成に取り組まなくてはならない。

現在の自選難度競技で,日本の代表となっている選手の中には,ジュニアの国際大会での日本代表を経験している選手も少なくない。今回の代表選手が今後いっそう精進を重ね,将来の日本代表としてさらなる活躍をされることを願っている。

また,大会期間中に応援と選手への励ましをいただいた参観団とご父兄の皆様には,この場をお借りして感謝申し上げたい。

 

●参加国・地域 メダル獲得数(散打種目を除く)

  国・地域名
1 中国 11 1   12
2 中国マカオ 6 6 6 18
3 中国香港 6 6 2 14
4 インドネシア 5 6 4 15
5 マレーシア 4 3 6 13
6 フィリピン 4 3 3 10
7 日本 4 2 6 12
8 ベトナム 3 10 3 16
9 イラン 3 3 5 11
10 韓国 3 2 2 7
11 中国台北 2 5 0 7
12 シンガポール 2 3 5 10
13 ミャンマー 1 4 5 10
14 インド 0 0 2 2
14 カザフスタン 0 0 2 2
14 ブルネイ 0 0 2 2
17 ネパール 0 0 1 1
合計 54 54 54 162

日本代表選手成績一覧(金4、銀2、銅6)

No. 性別 種 目 氏 名 所属団体 成績順位
1 A 男子 長 拳 別當  響 大阪府連盟 長拳国際第三套路1、刀術8位、棍術1
2 長 拳 金澤 慎治 兵庫県連盟 長拳国際第三套路6位、刀術1、棍術8位
3 女子 長 拳 大津こころ 大阪府連盟 長拳国際第三套路8位、剣術2槍術1
4 太極拳 寺岡 瑠里 北海道連盟 太極拳国際第三套路5位、42式太極剣4位
5 B 男子 長 拳 坂本  蓮 埼玉県連盟 長拳11位、刀術8位、棍術8位
6 太極拳 関沢 風汰 岩手県連盟 24式太極拳332式太極剣3
7 女子 長 拳 大田 優子 東京都連盟 長拳7位、剣術3、槍術6位
8 太極拳 齋藤 優芽 岩手県連盟 24式太極拳5位、32式太極剣5位
9 C 男子 長 拳 松島 迅汰 兵庫県連盟 長拳6位、刀術2位
10 長 拳 真茅 壱光 大阪府連盟 長拳13位、棍術4位
11 女子 長 拳 古川 萌華 岩手県連盟 長拳3位棍術3位
12 長 拳 林  聖那 埼玉県連盟 長拳14位、槍術3位
13 監 督 谷川  大 選手強化委員会委員長
14 コーチ 前東 篤子 同委員会副委員長
15 コーチ 孔  祥東 同委員会強化コーチ
16 コーチ 丹井  均 同委員会強化コーチ
17 コーチ 神庭 裕里 同委員会強化コーチ