「東日本大震災から1年 復興への道」被災各県からの活動状況

東日本大震災― 1年

【掲載:2012年03月15日】

未曾有の被害をもたらした東日本大震災から1年になります。会報「武術太極拳」3月号では「東日本大震災から1年 復興への道」として,被災された各県連盟から被災地の復興の様子,会員の皆さんの最近の活動状況などを寄せていただきました。

岩手県武術太極拳連盟

──皆さんから励まされたこの1年

全国各地の皆様から寄せられた温かいご支援に励まされ,様々な問題を乗り越えながら運営してきた1年でした。当初あきらめかけていた岩手県連盟創立20周年記念事業も県大会の形で開催でき,心をひとつに新たなスタートとなりました。

津波被害の大きかった沿岸部の本格的な復興にはまだまだ時間がかかりますが,「おおふなと放松塾」からは活動再開の様子も伝えられています。

「陸前高田太極拳クラブ」では,犠牲になられた方々を偲ぶ会を2月5日に開き,仲間同士で語り合う場を持ったとのことです。取り巻く環境は大きく変わったが,前向きに活動を続けていきたいとおっしゃっています。

県連盟では昨年中止となった長拳6~3級技能検定を新年度は実施し,東北ジュニア交流大会も再開される予定ですので,ジュニア選手たちの意欲も高まりそうです。心を寄せて下さっている多くの方々に応えるためにも,今後も元気を失わずに活動を続けて参ります。

(高橋喜子・岩手県連盟事務局長)



活動を再開した岩手県沿岸部の
「おおふなと放松(ファンソン)塾」の皆さん

宮城県武術太極拳連盟

──早いものでもう1年に

震災直後から,余震,原発事故と,心の休まる時のないまま,春が過ぎ,夏が過ぎ,時ばかりが過ぎていきました。

8月中旬になって,県大会で使用していた体育館が9月から使えるとの連絡が入り,県大会に向けて実行委員会が活動開始。また,9月には,「ねんりんピック宮城・仙台」本会場の仙台市宮城野体育館が10月から使用できるとの連絡を受けて,10月30日のねんりんピック・リハーサル大会を本番と同じ会場で行うことが可能となり,実行委員会は猛ダッシュで準備に取り組みました。

昨年上半期は,大会や県連盟主催の講習会などが予定どおり実施できないのではと心配しながら過ぎました。9月からは「ねんりんピック宮城・仙台2012 太極拳交流大会リハーサル大会」(2011年10月30日),「同予選会」(12月10日),「第19回宮城県武術太極拳連盟選手権大会」(12月11日)の3つの大きな大会を開催できたことは,大きな力となりました。

年が明けていよいよ10月14日の「ねんりんピック宮城・仙台2012 太極拳交流大会」へと,県も市も本格始動。全国から出場される皆様に満足していただけるように,準備を重ねています。

心からの笑顔で皆様をお迎えしたいと思っています。お会いできる日を楽しみに,頑張ります。

皆様のご支援に感謝しています。

(鹿島眞理・宮城県連盟事務局長)



宮城県気仙沼武術太極拳協会
会員の皆さん

 

──「太極拳の灯を絶やさず」

私たちの住む,国立公園気仙沼は自慢の港町でした。その町が,昨年3月11日,巨大地震と大津波,そして火災の発生で瓦礫と化し,美しい海岸,町並みは1日にして消滅しました。

まさに茫然自失,会員1名の貴い命を失い,避難所,仮設住宅と目まぐるしい環境の変化に,誰もが心身ともに疲労しました。

こうした状況のなか,一番勇気づけられたのは全国の武術太極拳愛好者から寄せられた励ましの義援金と太極拳用の物資でした。義援金に涙し,支援物資に頬ずりし,元気を出したのを昨日のように思い出します。あらためて御礼感謝申し上げます。

あれから1年,皆様からの支援激励を胸に,震災にめげずに希望を持ちながら,太極拳活動を再開しています。

震災で1市2町13練習会場のうち,7会場が流失したため,活動停止となりましたが,現在11会場に復活しました。元気にしていますので,ご安心下さい。

昨年11月には「健康まつり太極拳のつどい」を開催し,被災会員を囲み,励まし合いながら演武しました。

また,ねんりんピック宮城代表選考大会では当協会(気仙沼武術太極拳協会)チームが入賞し,出場権を獲得しました。

私たちはこれからも「ひるまずあきらめず」太極拳の灯を絶やさず活動を進めてまいりますので,今後とも応援よろしくお願いいたします。

(星野宏幸・宮城県連盟副会長,気仙沼武術太極拳協会会長)

 

福島県武術太極拳連盟

──復興の証として,秋に創立20周年記念行事を

早いもので,悪夢としか言いようのない大震災から一年になろうとしています。直後は状況が理解も予測もできない状態でした。幸いにも県連盟会員には直接的な人的被災もなく安心したところです。住宅は程度の差こそあれ全県域で被災しました。それに輪をかけたのが原発事故で,避難者を圧倒的に多くしました。この放射能被害はいまなお続き,先が見えていません。福島県民の生活を大きく変えてしまいました。県内各市町村をはじめ県外の仮設住宅や借上住宅に居を移された会員も多くいます。警戒区域等の立入りが制限されている地域以外の大多数の県連会員は,表面上は普段と変わり無い生活まで戻りました。被災した体育施設もほぼ従前のように利用できるようになりました。しかしながら心理的な影響や将来の不安は拭い去ることができず,その影響は県連盟の太極拳行事の参加状況にもあらわれています。

【被災された会員,被災地域の近況】

朗報としては,全域が計画的避難区域になっている相馬郡飯舘村の「いいたて太極拳サークル」が福島市に避難している会員が中心となって今年4月より活動を再開することになったことです。

【震災による行事の影響】

《できる人たちで,できる限り開催しよう》として主管団体・体育施設の可能な限り取り組みました。

昨年8月に東北ブロックジュニア太極拳交流大会を福島市で開催する予定でしたが中止となりました。ねんりんピック福島大会は中止となったので,「ねんりんピック福島県代表選考会」を開催して,代表チームをねんりんピック熊本大会に派遣出場しました。今年5月には「第20回すこやか福島ねんりんピック」として会津若松市で開催します。

【今後の行事】

例年に変わりなく活発に行事に取り組もうと思っています。それが自宅を離れ,避難を余儀なくされている会員の励みになると思うからです。ねんりんピック・交流大会・県総体(県選手権大会)と浜通り地区の会員をはじめ県連盟会員がこぞって活力のある太極拳活動を目指したいと思います。福島県連盟は今年11月に創立20周年の記念行事を計画しています。県連全体が心を一つにして,復興の証としても成功させたいと思います。

(石澤久芳・福島県連盟事務局長)



1月15日の福島県新春交流大会で,
復興の思いを寄書きしているところ

 

茨城県武術太極拳連盟

──復興から1年 皆さんの支えに感謝して

水戸武術太極拳協会と取手武術太極拳協会の様子を報告いたします。

家屋全壊の会員は,危険地域の指定をうけ建築許可が下りず土地,家を買って移住。元の土地は売却出来ず。半壊の会員で,現在建て替え中の方,3月から工事に入る方がいます。未だに業者待ちの状態が続いている方もいます。

塀に関しては,いつになるかもわからない状況だそうです。

放射能汚染について

県連盟事務局がある取手市は当初から放射能の数値が県内で一番高い数値を示していました。

学校,幼稚園,保育所,12月には公園も除染対象になりました。取手市には96カ所の公園があり,モデル地区の5カ所が除染対象になりました。その中の1カ所,羽中公園では毎朝7時から太極拳を楽しんでいる仲間がいます。「羽中公園太極拳」という呼称で,もう10年も続けているグループです。

このグループは震災の翌日から太極拳をしていたとの事,公園が除染対象になり,活動の場が使用禁止になったにも関わらず,公園隣接のスーパーの空き地を利用して練習を続け,誰からも中止しようという声は出なかったそうです。

昨年は羽中公園太極拳から4名の初段合格者が出ました。太極拳好きの熱意はたいしたものです。

被災した方もいるのに,皆さん明るく元気,「継続は力なり」を実践されています。

今年1月からは公園も使用できるようになり,新しい土と丸裸になった街路樹が対照的で,そんな中で太極拳をしている方に感動しました。

お陰さまで,茨城県連盟の事業で中止になったものはなく,会場の変更をして実施することができました。

皆さんに支えていただき心から感謝申し上げます。

(塚原加代子・茨城県連盟事務局長)



「羽中公園太極拳」の練習風景。
茨城県取手市内で