2018年度冬季海外強化合宿(福建)を実施

強化指定選手22人、強化コーチ2人が参加

(公社)日本武術太極拳連盟は、「2018年度冬季海外強化合宿」を、昨年末12月28日から今年の1月5日まで、中国・福建省福州市武術運動管理センターで実施した。

本合宿は公益財団法人日本オリンピック委員会選手強化NF助成を受けて実施されたもので、今年度の日本代表選手を含む男女合わせて22人の選手と日本連盟選手強化委員会のコーチ2人が参加した。

合宿は、選手強化NF事業として実施された

合宿は、選手強化NF事業として実施された

 

2018年度冬季強化合宿レポート

2018年度の冬季強化合宿に関して、各種目ごとにまとめて報告する。

長拳組レポート

今回の合宿は、現日本代表選手と若手の選手でメンバーが構成され、コーチは長年にわたって日本チームを指導している北京武術チームの厳コーチが担当し、身体の使い方やリズムなど表現力に関わる練習がメインとなった。

近年の国際大会の流れやフィジカルが圧倒的に進歩する中、アマチュアの日本チームとしてどのように良さを出していくかが重要となる。難度動作のレベルを徐々に上げつつ、規格通りの正しい形、そして演武のリズムを明確にしていくことが課題となった。

練習中、特に意識して指導されたのは、「武術は他人に対して見せるスポーツ」ということで、たとえ自分自身がやりやすかったり綺麗だと思った動作をしているつもりでも、観客や審判から見るとそうでないこともある。より客観性を持って自分の套路作りに取り組むことが必要だと厳コーチは強調した。それを繰り返し、自分に合った動作を探し、自分の持ち味にしていく作業が必要だと再認識した。

また、難度動作に関しては、回転の角度を上げることは重要だが、それよりも確実に着地を決めることが必要で、怪我のないよう十分に考慮しながら行うことが最優先だと説明された。

各選手、期間中に自分の課題を見つけることができ、非常に有意義な合宿となった。

南拳組レポート

福建省武術チームの魏コーチが担当し、今回は2人という非常に少ない人数での参加となったが、その分非常に濃い内容でしっかりと見てもらうことができた。

昨年度の福建での年末合宿と同様、訓練は魏コーチ率いる福建チーム・南拳組の練習に参加。メニューは基本動作・分段練習・難度跳躍・組み合わせ動作・素質訓練・筋力トレーニングを曜日ごとに組み合わせた内容で行われた。

今回の合宿では、これまでの春の東京合宿や年末での合宿などと異なり、我々日本チームも中国人選手とともに720°・C難度の難度跳躍の練習に臨むことができた。

まだまだ課題も多く見つかったが、日本チームの南拳の全体的なレベルも上がったと思われる。

套路練習においては、基本動作と分段の反復練習が非常に多く、体への負担も大きいものであったが、南拳の2人はケガや体調不良を起こすこともなく、最後まで訓練をこなすことができた。

今回の合宿でケガこそなかったものの、套路動作における技術と難度跳躍の高さや美しさのレベルアップに伴い、体への負担もこれまでのものよりも大きくなっていく。これに対し、素質訓練や筋力トレーニングによって身体能力を上げ、より大きい負担にも耐えうる体を作っていくべきであるのかもしれない。

帰国後は、各選手が意識を高く持って、套路練習で教わった技術にさらに磨きをかけ、難度もただ跳躍の練習をこなすだけではなく、筋力トレーニングによる体力作りも併せて行う必要性を感じた。また、套路と難度のどちらかに偏るということがないよう、全体のレベルを上げていくことが求められており、選手が基本の大事さを再認識することができた強化合宿となった。

太極拳組レポート

昨年より、太極拳、太極剣の必選動作の組み合わせを多く行い、個々の癖を指摘してもらうと同時に、李強コーチからの全体指導が昨年より多く感じられ、各選手の課題もより見えてきた訓練となった。

また、中国人選手と合同で訓練を行うことにより、その動きから、表現の仕方を学ぶことができた。

近年、国際的にも難度のレベルが上がってきており、日本の太極拳種目でも旋風脚や擺蓮などを套路に取り入れる選手が増えてきた。しかし、跳躍のポイントが押さえられておらず、成功率が低いことが課題であった。

そこで今回の合宿では、旋風脚180°や旋風脚360°、擺蓮360°の跳び方や着地の仕方などについて細やかな指導を頂いて、繰り返し訓練が行われた。その結果、多くの選手が少しずつ成功率を上げることができた。

今後の課題は、体の軸がぶれずに跳び、安定した着地ができるよう、繰り返し練習する事と、今回の合宿で練習した筋力トレーニングなどを取り入れながら難度動作に耐えられる体作りをしていくことである。

発勁動作の訓練では、各自の套路の中の組合せを繰り返し練習し、動作のリズムと正しい力の使い方を学んだ。また、個々人が中国人選手の動作を学びに行き、新しい発勁の組合せを積極的に勉強していった。課題としては発勁の組合せのリズムと合理的な力の使い方を身につけるべきである。そして基本功の時から表情に注意し、発勁動作に繋げていくことも大切である。

(日本連盟・選手強化委員会 孫建明ヘッドコーチ)

2018年度 冬季福建合宿 参加者名簿

No.種目性別氏名所属出身
1 太極拳男子荒谷 友碩千葉県連盟千葉県
2 蝦名 冬馬東京都連盟北海道
3 藤沢  佑秋田県連盟秋田県
4 村上  僚東京都連盟北海道
5女子齋藤 志保岩手県連盟岩手県
6 庄司 理瀬秋田県連盟秋田県
7 花野 宏美兵庫県連盟兵庫県
8 平田 優花埼玉県連盟埼玉県
9長拳男子大川 智矢東京都連盟北海道
10小松  資東京都連盟愛知県
11坂本  蓮埼玉県連盟埼玉県
12三船  仁福岡県連盟福岡県
13三船  陸福岡県連盟福岡県
14松本 鷹仁東京都連盟北海道
15村上 舜平東京都連盟北海道
16女子池内 理紗埼玉県連盟埼玉県
17柏熊 結姫東京都連盟東京都
18貴田菜ノ花兵庫県連盟兵庫県
19本多 彩夏東京都連盟埼玉県
20山口 啓子東京都連盟大阪府
21南拳男子朝山 義隆大阪府連盟大阪府
22毛利 亮太大阪府連盟福岡県
23コーチ孫  建明選手強化委員会 ヘッドコーチ
24孔  祥東ジュニア普及委員会ジュニアヘッドコーチ
李強コーチの熱心な指導を受ける選手たち(太極拳)

李強コーチの熱心な指導を受ける選手たち(太極拳)

海外合宿は、スポーツを通じた国際交流にも

海外合宿は、スポーツを通じた国際交流にも

指導を受ける貴田菜ノ花選手(長拳)

指導を受ける貴田菜ノ花選手(長拳)