輝け!武術太極拳アスリート ~池内理紗選手・貴田菜ノ花選手~

〜強化指定選手紹介〜

日本武術太極拳連盟・選手強化委員会が認定する強化指定選手の活動や競技に向けた想いなどをご紹介します。

武術とその外の世界

私は大学3年生のとき、イギリスへの留学を決めると同時に帰国後の全国大会に出ることを決めました。

宣言したはいいものの、そう簡単にいくものでもなく、なんで自分はイギリスまで来てこんなに大変なことをしているんだろう、と悩むこともありました。

武術を通して得られたものは数え切れませんが、今振り返ると一度外に出たからこそ気付けたこともたくさんあります。

私は前回の2人の先輩方のように素敵な文章は書けませんが、私の少し「変わった」経験から考えたことをお話しできればと思います。

「当たり前」じゃない。

留学という出来事を通して気付けたことの一つに、「自分が置かれた環境のありがたさ」があります。それまで毎日のように練習でき、教えてくださる先生がいて、切磋琢磨する仲間がいて、強化練習では絨毯も使わせていただいていました。これが私にとっての「当たり前」でした。

しかし、イギリスにはそこまで整った環境はありません。趣味で練習に来ているメンバーの中で一人大会に向けた追い込みをするのは、皆応援してくれているとはいえ、苦しいのだということを知りました。それまでの自分の「当たり前」を離れたことで日本の練習環境のありがたさ、同じ目標を持つ仲間やサポートしてくださる方々の大切さに改めて気付くことができました。

今やりたいことを大切に。

もう一つの気付きは「その時やりたいことをやること」の大切さです。

選手を引退してから留学をするという方法もありました。でも私は「その時」留学したかったのです。その気持ちを誤魔化さずに選んで良かったと思っています。とても大変で、なんでこんなにきつい道を選んでしまったのかと思うことも、もちろんありました。

そこで私を繋ぎ止めてくれたのは、チームメイトであり、自分の武術に対する気持ちでした。

やりたいことがどんなに難しそうに見えても、すぐに諦める必要はないなと思います。もちろん一概には言えませんが、心からやりたいと思えばきっと道はあるし手を差し伸べてくれる人もいると知りました。

武術に専念するために出来る限りの環境を整え、武術を深めることも一つ。武術に加えて他のことにもチャレンジすることも一つ。武術をやらないと決めるのも一つ。

自分が本当にやりたいことを見極め、決断するには大変な勇気が必要だと思います。

一人ひとりの選手がそれぞれの決断をしてコートに立ちます。その決断がどんなものなのかは見るだけではわかりませんが、その決断に後悔のないように全力で演武する選手を観に来ていただけると嬉しいです。

私はこの春から広告の営業として働いています。

これからも自分の置かれた環境に感謝しながら、他のことにも挑戦する道を選んでいこうと思います。

国内(上)とイギリス留学中(下)のチームメイトと

池内 理紗 IKEUCHI Risa
1995/9/8生 埼玉県出身
所属:埼玉県武術太極拳連盟
職業:リクルート住まいカンパニー社員
主な競技成績:
■ 2017年第14回世界武術選手権大会
  棍術2位、刀術3位
■ 2018年第35回全日本武術太極拳選手権大会
  短器械2位、長器械2位

 

現役武術選手としてのセカンドライフ

「武術中心」の生活が始まってもう10年が経ちました。振り返れば、辛い経験もしたんです。小学校の頃には「競技人口少ないから一位なんちゃん。」などと揶揄されたこともあります。それでも、ブレずに目標に向かって、大好きな武術の練習に通い続けました。中学生、文武両道をモットーに自分を奮い立たせました。武術を言い訳にしたくなかったため、何事にも一生懸命取り組む日々を送りました。高校生、国際大会で成績を残せたこともあり、その姿勢が認められたのか、多くの方々に激励や応援をしていただけるようになりました。純粋に嬉しかったのを覚えています。

そして去年、大学入学に合わせてシニア選手に転向。第二の武術人生が始まりました。

世界大学選手権では、悔しい結果でしたが、たくさんの課題がみつかった大会となりました。

現在は、ワールドカップなど国際大会出場を目指しながら、充実した大学生生活を送ることができています。この環境に感謝し、その気持ちのすべてを武術の演武にぶつけています!

わたしの夢

武術は、いわゆるマイナー競技。だから、知名度をあげたい、興味を持ってもらいたい!オリンピック種目にしたい!!と多くの人が願っているでしょう。わたしもその一人です。

小学校の卒業式で「武術でオリンピックに出場します!」と壇上で発表しました。今思えば、すごい勇気と覚悟です(笑)。その後さらに、中国に興味を抱くようになり(武術あるあるでしょうか)中国学科に進学することとなりました。

そして、今年5月に出場した中国語のスピーチコンテストでは、武術と将来について自分の思いを発信することができたのです。

夢を実現するために、今までの道のりが常にありました。そして、これからも、その道を一歩ずつ前進していきたいと思っています。

わたしが武術を続ける理由

このように、わたしの人生には、いつでも武術が希望と目標を与えてくれています。当たり前のように生活に溶け込んで、家族の絆の要素となり、たくさんの大切な出会いをもくれた武術。

応援もそうですが、『なっちゃんの演武を見ると感動する』と言ってもらえることがあります。それらの言葉は、熱く昂ぶる感情と勇気をもたらし、わたしの原動力の一つになっています。わたしの武術で人の心を揺さぶりたい、もっともっとたくさんの人に見てもらいたい、さらには将来、指導や普及に努めたいと考えています。

わたしは心の底から武術が大好きです。

中国語コンテストでの発表の様子 テーマ “以武会友”

貴田 菜ノ花 KIDA Nanoha
2000/3/31生 兵庫県出身
所属:兵庫県武術太極拳連盟
学校:神戸市外国語大学中国学科2回生
主な競技成績:
■ 2017年第9回アジアジュニア武術選手権大会
  剣術1位・長拳2位・槍術3位
■ 2018年第35回全日本武術太極拳選手権大会 長拳2位
■ 同年 第1回世界大学武術選手権大会 長拳4位