輝け!武術太極拳アスリート ~別當響選手・齋藤志保選手~

日本武術太極拳連盟・選手強化委員会が認定する強化指定選手の活動や競技に向けた想いなどをご紹介します。

別當 響選手

自選難度競技・長拳の別當響です。

私は、5歳の頃から武術太極拳を始め、シニアの日本代表選手となって4年目を迎えました。

武術人生と怪我

2013年に長年の目標であった国際大会に日本代表として出場し、2種目で1位を獲得。しかし、3種目目の演武中に前十字靭帯を断裂しました。帰国後は再建手術と1ヶ月の入院、その後半年のリハビリ期間を経て、2014年の全日本競技会で復帰し、2016年からはシニアの日本代表に選出されることが出来ました。怪我の後遺症もほとんどなく選手を続けていましたが、昨年のアジア競技会の直前に半月板と内側側副靱帯を損傷しました。大会はなんとか出場し、5位入賞。しかし、表彰台には届きませんでした。帰国後は膝の経過を見るために1ヶ月の療養をとりましたが、10月末に再負傷してしまい、診断結果は半月板のロッキングでした。控えていたワールドカップは棄権せざるを得ず、すぐに半月板の縫合手術を行うことになり、主治医に2週間の入院、並行してリハビリを行うこと、そして半年間の武術練習禁止を宣告されました。

今年の全日本大会

11月の手術以降、回復は順調でしたが半年間のスポーツ禁止は自分の努力ではどうにもならず、常に不安ともどかしさを抱えていました。しかし、足を地面につけ、歩けるようになったり、走って跳べるようになったりする喜び、そして周りがそれを自分の事のように喜んでくれることがとても励みになり、当たり前の様に現役選手として復帰する事が出来ました。順調に進む回復とは裏腹に、怪我前との動きの違いに不安を抱えていたのですが、その自分を受け入れて挑んだ全日本大会でした。徒手種目で優勝した、あの時の心から溢れてくる様々な感情は、今でも鮮明に思い出されます。

世界選手権に向けて

“メダルを獲得し結果を残す”この目標を達成するために今自分に一番必要な事は、難度動作のレベルアップです。もっと難しい事に挑戦するのではなく、今出来る事のクオリティをあげて出場する事が、届かなかった表彰台の上に立つポイントであると考えています。

怪我の影響はまだ残っています。出来なくなった事も多くありますが、それ以上に得た多くの物があります。もう一度コートに戻って来られた喜びと強い気持ちを持って世界選手権に挑みたいと思います。きっと自分ならやれると信じています。

武術以外の活動

少し年の離れた弟がいた事がきっかけで幼い頃から子どもと関わる事が好きでした。幼児教育の大学に進学し、4年間で幼稚園教諭・保育士・小学校教諭の資格を取りました。今後は武術をしてきた事と教育について学んだ事を生かし、なんらかの形で子どもに関わり続ける人生を歩みたいと思います。

将来は武術の経験も活かし、子どもと関われる人生を歩みたい

別當 響 BETTO Hibiki
1995/1/19生 大阪府出身
所属:大阪府武術太極拳連盟
職業:NPO法人大阪太極拳協会 武術隊 アルバイト
主な競技成績:
■ 2013年 第7回アジアジュニア武術選手権大会
 長拳1位 棍術1位
■ 2018年 第18回アジア競技会 武術太極拳種目
 刀棍総合5位
■ 2019年 第36回全日本武術太極拳選手権大会 長拳1位

 

齋藤 志保選手

自選難度太極拳の齋藤志保です。岩手県盛岡市に生まれ、大学進学の際に活動の拠点を東京に移し、現在は太極拳スタジオで事務とインストラクターの仕事をしながら競技を続けています。

地元岩手

 4歳で武術太極拳に出会いました。競技歴は今年で21年目になりますが、小さい頃は他にも習い事をやらせてもらっていましたし、最初からこの競技に熱中していたわけではありません。当時は長拳をやっていましたが、始めた頃の記憶はウォーミングアップの鬼ごっこと、休憩中のおやつタイムばかりです。ただ楽しく、軽い気持ちで教室に通っていました。

転機は8歳の時です。武術太極拳の普及の為に東北を巡回していた孔祥東先生と出会いました。私は先生に太極拳へ種目を変えることを勧められました。もともと身体が柔らかかったことや、ゆっくり動くことが性に合っていたので、私は次第に太極拳にのめり込んでいきました。

それから長い時間をかけて、太極拳の基礎を徹底的に練習しました。幸い岩手には素晴らしい太極拳の先生や選手がたくさんいます。基礎の練習は地味で辛いものですが、仲間と切磋琢磨しながらだったからこそ乗り越えられましたし、それで得た技術は確実に今に繋がっていると思います。

年齢が上がるにつれて、難度競技に進む道が見えてきました。ですが私には圧倒的にジャンプの能力が足りず、跳躍難度は一から身体を作り直す必要がありました。難度の練習をするには岩手は環境が整ってはいませんでしたが、外を走ったり、跳び箱でジャンプトレーニングをしたり、岩手でできることを考え、1人で取り組んでいました。結局ジュニア最後の国際大会では難度を完璧にこなせず、良い成績ではありませんでしたが、岩手での経験は今後も私を支えてくれると思います。

武術への思い

自選難度選手になって早7年。後輩もいて、もうベテランの域に足を踏み入れています。今後は自分が上手くなるのはもちろん、技術やこれまでの経験で得たものを後輩と共有し、みんなでレベルアップしていけたらいいなと思います。

今年も世界選手権の代表に選んでいただきました。大会に出場する海外の選手はほとんどがプロです。武術だけに集中できる彼らに対し、少しは羨ましい気持ちもありますが、練習と生きる為の仕事に必死に食らいついている私たちだからこそ、表現できることがあると思います。本番のコートでは、本気で競技と向き合った分だけ演武に滲み出るものがあるのではないかと思います。

世界選手権では、お世話になった周りの方々へ恩返しをする為にも、良い色のメダルを狙いたいと思います。また、大会までもその後も、太極拳が上手くなりたいという気持ちを何よりも大切に、練習に取り組みたいと思います。

世界選手権での日本代表団への応援、よろしくお願い致します!

4歳で武術太極拳に出会い、長拳を始めた頃の思い出の写真

齋藤 志保 SAITO Shiho
1994/12/23生 岩手県出身
所属:岩手県武術太極拳連盟
職業:太極拳インストラクター
主な競技成績:
■ 2018年第2回武術套路ワールドカップ 女子太極拳 第2位
■ 2017年第14回世界武術選手権大会
 女子太極拳 第3位、女子太極剣 第3位
■ 2015〜2019年全日本武術太極拳選手権大会 女子太極剣 優勝
■ 2016〜2019年全日本武術太極拳選手権大会 女子太極拳 優勝