松江市と喜多方市が「太極拳ゆったり体操」で交流 10月8日

【掲載:2008年11月15日】

市長対談、シンポジウムと体操体験、ミニ講習会
 10月8日(水)午後、島根県松江市の島根県民会館で「松江市社会福祉大会」が開催され 、「福祉でまちづくり」を進める松江市が、「太極拳でまちづくり」を進める福島県喜多方市の市長はじめ関係者らを招いて、終日交流事業を行った。
 大会では、「介護予防における太極拳体操の意義について」をテーマにした白井英男・.喜多方市長と松浦正敬・松江市長の対談・シンポジウムが行われた。

 また両市長が参加して喜多方市が開発した「太極拳ゆったり体操」を参加者とともに実演した。喜多方市からは高橋信・高齢福祉課長と松崎裕美・同課太極拳のまち推進係長が参加した。
 両市の太極拳体操交流を中心となって進めてきた島根県連盟の西村敏理事長(松江太極拳協会代表)がコーディネーターをつとめた。
 松江市は「カラコロ太極拳体操」という気功の要素を取り入れた体操を推進している。
 「カラコロ太極拳体操」は松江太極拳協会の会員が、喜多方市で開かれた太極拳フェスティバルに参加した際、喜多方市の介護予防事業の取り組みなどに興味を持ち、それをヒントに体操の作成に着手し完成させたもの。
 大会当日午前には、タイアップ事業として「カラコロ太極拳体操」や各種の気功の体験会と喜多方市の「太極拳ゆったり体操」を学ぶミニ講習会が行われた。

「カラコロ体操」と「ゆったり体操」ミニ講習会

■太極拳体操交流シンポジウムの成果
島根県武術太極拳連盟・西村敏理事長

 2002年に太極拳のまち宣言をされた喜多方市は、太極拳の普及活動とともに太極拳を取り入れた体操の開発に全力をあげてこられました。私たち松江太極拳協会も5年をかけて、1000人の愛好者が試行錯誤の末、カラコロ(身体と心をいやす)太極拳体操の完成にこぎつけ、体操普及に向けてモデル事業を開始しました。
 今回のシンポジウムでは「官主導の喜多方市」と「民主導の松江市」のそれぞれの利点・課題が見えてきたこと、喜多方市と松江市で太極拳体操を通した友好提携関係を締結・調印されたことによって自治体間の連携による太極拳の普及という新たな展開を切り開くことができたこと、これを機会に今後さまざまな民間レベルの交流も活発化していくことなどが今回のシンポジウムの大きな成果だと考える。
 最後に、太極拳体操の普及によって地方自治体が抱える老人医療費の増大を抑える効果が大変大きいということも今回明らかになりました。今後、介護予防という観点からも「太極拳体操」の重要性はますます大きくなっていくことを確信しました。

■松浦(松江)・白井(喜多方)両市長の対談

西村氏: 松江市でも今年から太極拳体操への取り組みが始まりましたが、介護予防に対する市長のご意見は?
松浦市長: 高齢になっても健康で、住み慣れた地域で安心して暮らす、「健康で長生き」「生涯現役」が市民の願いだろう。松江市は、健康診断の受診率が喜多方市より低く、介護保険認定率、介護給付費、医療費とも、喜多方市より高くなっている。松江市でも健診受診の呼びかけを行い、生活習慣病予防、介護予防の事業に取り組んでいるが、喜多方の太極拳を取り入れた事業を参考にさせてもらいたい。
西村氏: 喜多方市が太極拳ゆったり体操事業に取り組んだ理由は?
白井市長: 太極拳のまち宣言後、喜多方市は様々な太極拳事業に取り組んでいる。太極拳は武術の持つ合理性に裏打ちされた、ゆったりとした優雅な動き、また身体のみならず心の修養にもなる、それがこれからの時代に合っている。私も太極拳を毎日行っているが、非常に体調がいい。これはいいものだと実感し、自信を持って事業を進めている。喜多方市では平成15年度から、太極拳の効果検証にあたっているが、平成15、16年度の予備的検証の結果、太極拳の効果を虚弱高齢者に活かすべきと考え、太極拳ゆったり体操の作成に取り組んだ。
西村氏: その効果は?
白井市長: バランス機能の向上と下肢筋力を中心とした全身の筋力アップに効果があることが証明されている。「歩くのに杖がいらなくなった」「できなかった家事ができるようになった」など、参加したほとんどの方が生活の質の向上を感じている。また、介護認定率、医療費ともに抑えられており、太極拳の効果が大きいのではないかと思っている。
西村氏: 松江市の医療費、介護認定率等は?
松浦市長: 松江市の年間老人医療費は、全国平均よりは低いものの喜多方市よりも10%程高く、介護認定率も全国平均、喜多方市より高くなっている。松江市の健診受診率、とくにがん検診の受診率は喜多方市よりも大幅に低く、自らの健康状態を知り健康づくりをする上でも、是非健康診断を受けてほしい。また、バランスのとれた食事、適度な運動が必要で、運動はカラコロ体操のような、ゆったりとした体操に取り組んでいただくのがいいと思っている。
西村氏: ゆったり体操の普及については?
白井市長: 現在指導員の育成をすすめているところで、体操を指導できるリーダーが6名、リーダーを補助するサブリーダーが21名、また指導員を目指すサポーターが市内ばかりではなく全国に162名いて、体操の普及に努めている。体操指導員については、資格制度、普及制度ともに新しい組織の立ち上げも含めさらに検討していく必要がある。病院、施設等で活用してもらうよう働きかけたり、保健事業への組み入れも図るなど、市民愛好者を増やす努力をしている。
西村氏: 松江市での普及は?
松浦市長: カラコロ太極拳体操推進プロジェクトを立ち上げ、モデル地区を指定して活動を支援していきたい。また、指導員養成のための研修会も行っていく。最初は補助員から、いずれは指導員になることを目指していただきたい。これらの事業により市民のみなさんが住みなれた地域で、安心して暮らしていただき、「健康で長生き」「生涯現役」でいていただきたい。
西村氏: 松江市の今後の取り組みについて助言を
白井市長: 松江市にはケーブルテレビがある。それを活用して普及していったらどうか?市民がテレビに出演して体操をすることで、観ている方も体操を身近に感じ、反響もあるだろう。それから、実施者が目的をもって取り組む環境をつくること。「体力をつけて旅行したい」「孫と遊べるようになりたい」など何でもいい。カラコロ体操の普及を願っている。そして太極拳体操を通じて交流の輪を広げていきたい。
松江市長: 松江市としても是非一緒に太極拳体操の推進に努め、交流していきたい。今日会場にお集まりの皆様には、是非健康づくりの意識をもち、カラコロ太極拳体操などの体操を普及させていってほしい。
その後、両市長が、「太極拳体操を通じた交流について」の文書を取り交わし、これから
の交流を約束した。

「カラコロ体操」を会場全員で

カラコロ太極拳体操
 北京の陳式太極拳第十八代伝人である、馮志強老師の編纂した太極混元気功をベースに武術基本功を加えた太極拳体操。太極拳の動作はできるだけ簡単にして、しかも高齢者の寝たきり予防と健康法としての効果を落とさないように工夫された。

太極拳ゆったり体操
 太極拳のまち喜多方が福島県立医科大学公衆衛生学講座、会津保健所と協働で、2年をかけ検証と改良を繰り返しながら作成した体操。座位と立位のバージョンにより、虚弱高齢者の筋力アップを図り、太極拳の開合を組み合わせた運動とともに骨盤と背骨を動かし、全身の筋肉をバランスよく鍛える。