「第1回武術套路アジアカップ(中国・吉林省)」結果報告

初開催となるアジアカップで金1個、銀2個、銅4個を獲得!

「第1回武術套路アジアカップ」が、アジア武連(WFA)主催により、7月2日(水)~7日(月)(競技は5日(土)・6日(日))に中国・吉林省にて開催されました。

本事業は、(公財)日本オリンピック委員会(JOC)選手強化NF事業助成を受けて実施されました。

本大会は、昨年9月にマカオで開催された「第10回アジア武術選手権大会」の各種目における上位8人に出場資格が与えられる、初開催となる国際大会で、16の国と地域から延べ158人の選手が23種目にエントリーし、アジアの頂点を目指してハイレベルな競技が繰り広げられました。

日本代表選手団(TEAMJAPAN)は、男女計10人の選手に加え、監督1人、審判員1人の体制で参加し、金メダル1個、銀メダル2個、銅メダル4個を獲得しました。

今大会の模様は、全世界に向けてJustToolなどによるライブ配信が行われ、多くの方々からの応援をいただきました。

ご声援を賜りました皆さまに、心より御礼申し上げます。

アジアの頂点に挑んだ10人の代表選手たち

アジアの頂点に挑んだ10人の代表選手たち

第1回武術套路アジアカップ(中国・吉林省)日本代表選手団(TEAM JAPAN)名簿と成績

種目 性別 氏名 よみがな 所属 出身 出場種目と成績
1 太極拳 荒谷 友碩 あらや ともひろ 千葉県 千葉県 太極拳7位、太極剣2位、双人1位
2 村上 僚 むらかみ りょう 東京都 北海道 太極剣6位
3 ⻄⼝ 直輝 にしぐち なおき 大阪府 兵庫県 太極拳4位
4 長拳 安良城 基睦 あらき もとよし 大阪府 大阪府 剣術4位、槍術4位
5 南拳 藪本 佳輝 やぶもと よしき 大阪府 大阪府 南刀7位、南棍7位
6 太極拳 齋藤 志保 さいとう しほ 岩手県 岩手県 太極拳3位、太極剣2位、双人1位
7 平田 優花 ひらた ゆうか 埼玉県 埼玉県 太極剣7位
8 長拳 池内 佳奈 いけうち かな 埼玉県 埼玉県 刀術4位、棍術3位
9 貴田 菜ノ花 きだ なのは 大阪府 兵庫県 剣術6位、槍術3位
10 古川 萌華 ふるかわ もか 岩手県 岩手県 長拳3位、槍術6位
11 監督 孫 建明 そん けんめい 選手強化委員会委員長
12 指名審判員 竹中 保仁 たけなか やすひと 審判委員会委員長、国際審判員

日本代表選手団 大会レポート

■目的

本大会は、2024年9月にマカオで開催された第10回アジア武術選手権大会において、各種目で上位8位以内に入賞した選手に出場資格が与えられる、アジア地域のハイレベルな大会である。日本チームは10名の選手がアジアカップへの出場権を得て、監督1名が帯同した。

また、2024年に発表された新ルールが適用される初の国際大会であり、新ルールに対応できているかが、試される大会であった。

金メダル獲得はもちろんのこと、各選手が良い成績獲得を目指し、新ルール対応など、日々準備を重ねてきた。

■成果

日本チームは金メダル1個、銀メダル2個、銅メダル4個、合計7個のメダル獲得という成績を得た。ミスや新ルールにより厳しくなった部分での減点が見られ、逃したメダルもいくつか見られた。

太極拳種目には男女合わせて5名が出場した。昨年銀メダルだったペアで行う双人太極拳では金メダルを獲得したほか、男女太極剣で銀メダル2個、女子太極拳で銅メダル1個を獲得した。

長拳・南拳種目には男女合わせて5名が出場した。女子長拳・槍術・棍術でそれぞれ銅メダルを獲得した。

ミスによる減点のほか、長拳種目では「コード22(開脚着地の規格減点)」による減点、太極拳種目では、「コード70A(揺れ)」など、新ルールにより以前よりも厳しくなった部分での減点で成績を大きく落とした種目もあった。以前にも増して誰が見ても完璧で安定した着地が求められるようになったことを確認した。

会場の松原体育館

会場の松原体育館

■課題

本番では全体的に安定した内容だったものの、一部選手に「コード70A(揺れ)」や「コード70B(移動)」による減点が見られた。また「コード22(開脚着地の規格減点)」についても本番で減点が見られた。引き続き普段の練習から確実な着地を意識し、成功率を上げていくことが必要である。

演技レベルの観点では、新ルールの施行により、基本技術の高さがより重視されるようになり、日本チームにとっては有利な状況となった。しかし、一つのミスが致命的となり、大きく順位を落とす可能性があるため、ノーミスで演技を終えることが最も重要である。そのためには、フィジカル面の強化はもちろん、本番特有の緊張下でも集中力を維持できるよう、精神面も含めた総合的な強化が求められる。また、更なる演技レベルアップのために一つ一つの動作への理解、ひいては套路への理解を深め、身体で表現することが重要である。

太極拳種目では、新ルールにより規定の演技時間が3分以上4分以内から2分45秒以上3分15秒以内へ大幅に短縮されたことを受け、音楽や演技構成の変更を行った選手が多かった。限られた時間内で技術・表現・構成をまとめる難しさがあり、まずはルールに適応することに重点を置いた内容となった。今後は、新ルールに対応した上で、より演技の完成度や迫力を高めていく必要がある。

8月にワールドゲームズ、9月に世界選手権と大会が続くため、今大会の反省を練習やトレーニングに活かしていくことが急務である。

連戦となる選手は調整期間が短いため、身体の疲労には注意が必要である。

選手強化NF事業助成を受けて実施

選手強化NF事業助成を受けて実施

クラファンの返礼として制作したご支援者のロゴTシャツ

クラファンの返礼として制作したご支援者のロゴTシャツ

■まとめ

今大会は、経費削減および全日本選手権直前という事情もあり、日本チームに帯同したのは孫監督1名のみであった。孫監督は、技術会議、順番抽選、公式練習の対応など、多くの役割を一手に担ってくださった(コートに立つ際は選手一人であるが、出番直前に監督が付き添うだけでも、選手にとっては大きな安心感となる)。現地では、主に年長の選手が主体となって動き、現地ボランティアと連携しながら孫監督をサポートした。限られた人数の中で自然と協力体制が生まれ、選手自身がチームの一員として運営面にも関わる、貴重な経験となった。

また、選手のご家族が現地に応援に駆け付けてくださり、その声援は大きな力となった。この場を借りて、心より感謝申し上げる。

今回のアジアカップでは、助成金で賄えない部分については選手の自己負担による参加となり、限られた準備期間の中で選手主導のクラウドファンディングを実施することとなった。大会出場が決定した3月末に計画を立ち上げ、4月中旬からプロジェクトを実施した結果、185名から合計2,421,000円の支援を受けることができた。この場を借りて、改めて深く感謝申し上げる。

多くの人々の厚意に触れ、選手たちは強く励まされ、応援の力を実感しながら日々の練習に取り組むことができた。一方で、クラウドファンディングの準備と国際大会に向けた練習の両立は決して容易ではなく、コンディションを崩す選手もいた。

昨年のワールドカップは、自国開催という特別な状況下において、大きなプレッシャーの中、出場16種目中14種目でノーミスの演技を実現した。それは選手たちの努力のみならず、日本連盟や大会スタッフをはじめとする多くの関係者による手厚いサポートの賜物であり、その重要性を改めて実感する機会となった。

このような好成績の背景には、日本連盟が長年にわたり、選手育成に多大な投資と支援を続けてきた積み重ねがある。十分なサポートを受けて臨んだ昨年のワールドカップとは環境が異なる中でも、選手たちは少しでも良い演技ができるよう全力を尽くした。

現在、日本代表チームはアマチュアとして活動しており、真に国際舞台で戦っていくためには、周囲からの継続的な支援と理解が不可欠である。温かいご支援があり成り立っていることを忘れずに、選手一同、更なる競技力向上に努めたい。

大会前には盛大に開幕式が行われた

大会前には盛大に開幕式が行われた

双人太極拳で金メダルを獲得した荒谷選手(右)、齋藤選手(中央)

双人太極拳で金メダルを獲得した荒谷選手(右)、齋藤選手(中央)

貴田選手(右)は槍術、池内選手(左)は棍術で銅メダル獲得

貴田選手(右)は槍術、池内選手(左)は棍術で銅メダル獲得

長拳で銅メダルを獲得した古川選手(右)

長拳で銅メダルを獲得した古川選手(右)

指名審判として竹中審判員(左)が参加

指名審判として竹中審判員(左)が参加

参加国・地域別 獲得メダル数

順位 国・地域名 合計
1 中国 10 1   11
2 中国⾹港 4 4 1 9
3 シンガポール 2 1 2 5
4 インドネシア 2   2 4
5 マレーシア 1 7 3 11
6 中国マカオ 1 3 3 7
7 日本 1 2 4 7
8 中華台北 1   1 2
9 ウズベキスタン 1     1
10 韓国   2 1 3
10 ベトナム   2 1 3
12 ブルネイ   1 2 3
13 インドネシア   1   1
14 フィリピン     2 2
15 ネパール       0
15 スリランカ       0
  合計 23 23 23 69