特集!!「2008北京武術トーナメント」 大成功!!!

43カ国・地域128人が 史上最高レベルの熱戦を展開
~ IOCロゲ会長が武術競技でメダル授与 ~

 「一つの世界、一つの夢(One World, One Dream)」をモットーに第29回オリンピック北京大会は、8月8日夜、華やかに開幕した。史上最多の28競技・302種目に、204カ国・地域から1万1000人の精鋭が参加して熱戦が繰り広げられ、24日夜、大成功のうちに閉幕した。
 今大会はアジアで東京、ソウルに次ぐ北京で開催され、アジアスポーツ界の進歩と発展を世界に示す大イベントとなり、成功裡に終了したことを祝いたい。

■「武術トーナメント」に五大陸43の国・地域から128人の精鋭が集う
 武術太極拳は、北京オリンピックの期間中に、オリンピック競技実施会場となった「国家オリンピックスポーツセンター体育館」で、8月21日午前から24日午前まで「2008年北京武術トーナメント」として実施された。
 同トーナメントには43カ国・地域から128人の選手が集い、套路は男女各5種目、散手は男子3種目・女子2種目の計15種目で華々しく競技が展開された。
 日本からは套路に男子3人、女子2人、散手に男子1人の計6人が出場した。

■武術史上初、表彰式にIOC、組織委の両会長、中国体育相らが参加
 大会2日目の8月22日午前、武術の套路種目が満員の観客の大声援を受けて行われている時、賓客がそろって来場。場内には大きな歓声と熱烈な拍手がわきおこった。
 王筱麟国際武術連盟(IWUF)秘書長の先導で、国際オリンピック員会(IOC)のジャック・ロゲ会長、同夫人、北京五輪組織員会(BOCOG)の劉琪会長、中国国家体育総局の劉鵬総局長、IWUFの于再清会(IOC副会長)らが主席台に座った。
 一行はIWUFの各執行委員らの説明を受けて熱心に套路の熱戦を参観、好プレーには拍手を送るなど30分ほど観戦した。成績発表と表彰になると、ロゲIOC会長と劉琪BOCOG会長はスタンドに降りて表彰台に赴き、女子長拳の1位、2位、3位の選手に、ロゲ会長がメダルを、劉琪会長が花束を手渡し、健闘を讃えて握手を交わした。
 この光景に会場の観客、場内の各国選手団、審判、運営関係者らからいっせいに歓声が上がった。

■武術協会歓迎会でもIOC代表が祝辞
 国際武術連盟(IWUF)と中国武術協会は8月22日夜、「武術トーナメント」参加の選手・役員とIWUF役員、審判関係者を招いてオリンピック公園近くの浙江大厦で歓迎交歓会を開催した。
歓迎会にはIOCを代表して、IOC委員で北京五輪コーディネーション・コミッション委員長のヘンベルブルゲン氏(オランダ)が出席し、挨拶を行った。多くの中国武術界関係者も出席した。

■頑張った日本の選手たち
 「2008年北京武術トーナメント(WushuTournament Beijing 2008)」は、国際オリンピック委員会(IOC)の承認の下に、北京オリンピック組織委員会(BOCOG)が主催し、国際武術連盟(IWUF)と中国武術協会(CWA)が主管して開催されたもの。
 昨年11月に、同じ「国家オリンピックスポーツセンター体育館」で開催された「第9回世界武術選手権大会」で、この「トーナメント」の出場資格の選抜競技が行なわれた。その結果に基づいて、日本代表の套路競技選手5人、散手競技選手1人を含む128人の選手が43カ国・地域から選抜されて出場した。
 套路競技は男女各5種目、計10種目で、散手競技は、男子3階級、女子2階級の計5種目、合計15種目の競技が行なわれた。

■オリンピック正式種目並みの待遇と競技運営
 武術の各国チームは8月18日に北京入りして、北京オリンピック組織委員会(BOCOG )の指示により、オリンピック選手村に入村した。
 日本代表の套路選手5人、監督1人は7月下旬から北京市什刹海体育運動学校で直前強化訓練を行っていたが、18日に散手代表選手、監督の2人と合流し、各国チームとともに選手村に入った。
 それ以来、大会が終了し、オリンピックの閉幕式が行なわれた8月24日までの期間、各国チームは、選手村と競技会場で、オリンピック種目とほぼ同様な待遇を受けた。また、競技会場の競技運営や表彰セレモニー等はすべて、組織委員会によって整然と実施された。

■鍛え抜かれた最高レベルの競技
 国際武術連盟(IWUF)は、2002年に国際オリンピック委員会(IOC)にたいして、北京オリンピックにおいて武術が正式種目として採用されるよう申請を行なった。それ以来、オリンピック競技に適合するために、国際競技ルールを改正し、「2003年版試行ルール」、「2005年版確定ルール」、「2007年版改定ルール」で国際競技大会を実施してきた。
 世界各国の武術界は、「2008年北京オリンピック」を目指して、選手強化と競技力向上を図るために組織の総力を挙げて取り組んできた。
 「トーナメント」出場の43カ国・地域128人のうち、アジアからは、18カ国・地域80人の選手が出場した。本誌08年6月号(No.223)で既報の通り、アジア各国チームは、今年5月にマカオで行なわれた「第7回アジア武術選手権大会」の激しい前哨戦を経て、メダルを狙う重点種目に必勝の気迫と万全の準備態勢で臨んできた。
 日本チームは、孫建明ヘッドコーチを中心に、選手強化委員会のコーチが一丸となって選手の強化訓練にあたってきた。套路競技の代表選手全員は、7月下旬から3週間におよぶ北京での直前強化訓練に参加し、長年日本代表選手の強化にあたってきた中国のトップクラスのコーチによって最終段階の訓練を受けることができた。日本チームも、万全の態勢で本番に臨んだと言える。
 その結果、「トーナメント」の競技は、 どの種目でも、昨年11月の「第9回世界武術選手権大会」と今年5月の「第7回アジア武術選手権大会」よりもさらにレベルアップした内容で行なわれ、各国がしのぎを削って選手強化を図った結果、「トーナメント」は、史上最高レベルの技術水準で、白熱した熱戦が繰り広げられた。

■日本は<銀1、銅2、4位2> 誇るべき好成績
 日本選手5人が出場した套路競技では、「女子南拳&南刀」で小島恵梨香選手(滋賀県連盟)が2位銀メダルを獲得した。また、「女子太極拳&太極剣総合」の宮岡愛選手(神奈川県連盟)と「男子太極拳&太極剣総合」の下田賢大選手(大阪府連盟)が、それぞれ3位銅メダルを獲得した。
「男子長拳」に出場した市来崎大祐選手(大阪府連盟)は、3位のイラン選手に最小得点差の0.01点差で惜しくも4位となった。
 「男子南拳&南棍」に出場した中田光紀選手(東京都連盟)も3位のマレーシア選手に次ぐ成績で4位となった。
 散手競技70kg級に出場した笹沢一有選手(東京武術散手倶楽部)は、第1回戦で、ロシアの強豪選手(AKHDOV Murad)と対戦し、2ラウンドとも健闘したが、惜しくも敗退する結果となった。
 「トーナメント」の規定で、1カ国は最多8人の選手枠であり、中国は8人のうち、套路競技に6人、散手競技に2人の選手が出場した。套路日本選手5人の出場種目のうち、中国選手が出場しない種目は「男子南拳&南棍総合」だけであった。
 また、試合前日の出場順抽選会で、日本選手4人(4種目)が、出場順第1番目を引き当てる不運に見舞われた。
 それにもかかわらず、套路競技の5人の選手が、銀=1人、銅2人、4位=2人を獲得したのは、誇るべき優秀な成績であった。

南拳・南刀総合で 銀メダルを獲得した小島選手

■43チーム中16チームがメダルを獲得
 今大会の国別メダル獲得状況は次の通り。
 メダルを獲得した国・地域のうち、日本を除く殆どが、「プロ態勢」あるいは「フルタイム訓練態勢」を敷いている(選手の生活、教育とフルタイムの訓練態勢が保証されている)。
 日本の代表選手全員は、学生か職業を持っている者であり、学業や仕事と両立させて、厳しい訓練を続けてきた結果、このような成績を挙げたことは大いに誇ることができるものである。
 選手の努力とその結果を讃えるとともに、選手を支えた、コーチ、所属団体、家族ら関係する方々に対しても、大いに感謝し、賞賛を贈りたい。

套路競技:
男子5種目、女子5種目、計10種目

順位 国・地域名
1 中 国 6 0 0 6
2 中国香港 2 1 1 4
3 ロシア 1 1 0 2
4 フィリピン 1 0 0 1
5 中国マカオ 0 3 0 3
6 マレーシア 0 2 3 5
7 日 本 0 1 2 3
8 中国台北 0 1 0 1
9 イタリア 0 1 0 1
10 ベトナム 0 0 2 2
11 インドネシア 0 0 1 1
12 イラン 0 0 1 1
  メダル合計 10 10 10 30

散手競技:
女子2階級、男子3階級、計5種目

順位 国・地域名
1 中 国 2 0 0 2
2 ロシア 1 2 0 3
3 イラン 1 1 1 3
4 中国マカオ 1 0 1 2
5 フィリピン 0 1 2 3
6 ベトナム 0 1 1 2
7 エジプト 0 0 2 2
8 韓 国 0 0 1 1
9 イギリス 0 0 1 1
10 ブラジル 0 0 1 1
  メダル合計 5 5 10 20

なお、5種目でメダル合計が20個であるのは、散手競技ルールにより3位は同順位2人であるため。

■日本チームの五輪精神
 套路選手5人、散手選手1人の日本代表選手は、全員が見事に集中力を保って競技に臨み、訓練の成果を十分に発揮することができた。
 競技終了後に、メダルを獲得した選手のだれ1人もが引退を表明していない。また、メダルに届かなかった選手のだれ1人もが挫折を示していない。全員が次の大会を目指して、早くも訓練計画を立てている。
 選手は、長年にわたる厳しい訓練に耐えたうえで、この「トーナメント」で自己の最も高いレベルを体現することができた。同時に、ライバル選手が示した高いレベルも十分に理解することができたのではないか。
 0.01点差でメダルが分かれる厳しい競技のなかで、選手はさらに上のレベルを目指すことの意味に目覚めたと思われる。これが「五輪精神」であると言える。
 武術太極拳は、北京オリンピックの正式競技種目になることはできなかったが、この「トーナメント」を通じて、日本選手全員が「五輪精神」に目覚めたことは、なによりも大きな成果であった。

■日本連盟から競技役員を派遣
 「トーナメント」には、国際武術連盟(IWUF)の指名を受けて、石原泰彦理事(IWUF技術委員会委員)が大会副総審判長を、また、及川佳織国際審判員が、IWUF指名中立審判員の業務を担当した。
 村岡久平副会長は、IWUF理事として、表彰セレモニーで表彰役員を担当した。

■日本応援団が熱烈声援
 日本連盟は、今年2月に「トーナメント」の応援ツアーを募集した。今年2月以降8月のオリンピック開催までに、中国国内や中国を取り巻く環境のなかで様々な出来事が生じたにもかかわらず、74人の応援団が参加した。日本連盟の関係役員や代表選手の家族、友人の方々などであった。
 競技会場の「国家オリンピックスポーツセンター」は、期間中、4,000人収容の観客席が連日ほぼ満席となる大盛況であったが、応援団は日本選手が出場するたびに、日の丸を掲げ、熱烈な声援を送った。
 会場の周辺地域は、オリンピック期間中の厳重な警戒体制と交通規制が敷かれているなかで、応援団の参加者は、2つのホテルに分宿して、連日、地下鉄駅から徒歩で競技会場に通うなどして、熱心に声援を送った。

 

■日本連盟が応援参観団を招いて昼食会
 日本連盟はトーナメント観戦と応援に北京を訪れた方々を招いて、8月23日、安徽大厦で昼食会を開いた。60人余が集まり、なごやかに交歓した。日本連盟の村岡久平副会長が応援・参観団一行の熱意に敬意を表するとともに、加藤勝信副会長と高田明副会長が挨拶と乾杯を行った。