「第7回世界ジュニア武術選手権大会」金4個、銀4個、全員入賞の活躍!

2018年7月9~16日、ブラジル・ブラジリアにて42ヵ国・地域から700人近くが参加

国際武術連盟(IWUF)主催の「第7回世界ジュニア武術選手権大会」が、7月9~16日(競技日程:7月12~15日)にブラジルのブラジリアで開催され、会場のニルソン・ネルソン体育館には、世界42ヵ国・地域から700人近くの選手・役員が集った。

日本連盟では、ジュニア日本代表選手8人と監督・コーチ4人、帯同審判員1人の計13人を派遣した。

時差12時間と遠方の地での大会となったが、現地まで応援に駆けつけたご家族の皆さまやライブ放送での日本からの応援もジュニア選手たちの力となり、大会に挑んだ。

套路競技3日間ともにメダル獲得

日本ジュニア武術隊は初日から、香取尚弥選手がA組太極剣で銀メダルを獲得、2日目は毛塚来美選手がA組太極拳と太極剣を制して金メダル2個を獲得、樋ノ口大翔選手はB組男子42式太極剣で銀メダル、大野雅也選手もA組男子棍術で銀メダルとメダルラッシュとなった。套路競技最終日の3日目もB組男子長拳で中田琉月選手が金メダル、B組女子棍術で中村里香選手が金メダル、A組女子剣術でも林聖那選手が銀メダルを獲得した。B組太極拳種目の森風姫子選手は惜しくもメダル獲得とはならなかったが、両種目とも入賞を果たし、最終的に日本隊は合計して金メダル4個、銀メダル4個、全体でメダル獲得数第5位(套路種目には35カ国が出場)、全員入賞という大健闘の結果となった。

本事業は、(公財)日本オリンピック委員会(JOC)選手強化NF事業助成を受けている。

詳細な成績の一覧はこちらに掲載する。

01_第7回世界ジュニア選手権01_集合写真

遠方の地で活躍をみせた日本代表選手団一行


01_第7回世界ジュニア選手権02_会場

会場の「ニルソン・ネルソン体育館」

監督・コーチレポート

直前合宿

4日間にわたり日本連盟トレーニングセンターにて直前合宿を行った。開催地のブラジリアまでの移動は2日間と長く、到着後も十分行えない現地での練習状況を予想して、連日2単元の訓練を行った。通常、国際大会の直前には、新ルールによる減点箇所のチェックや体力回復を目的に調整メインの練習を行うが、今回はしっかり時間をかけて仕上げのレベルアップを図った。

国際大会によっては太極拳種目の時間規定、音楽の有無に違いがある。今回は時間規定が設けられており、対応できていない選手がいたが、合宿でしっかり調整し大会に向かうことができた。

アンチ・ドーピング活動

ジュニア選手といえども、大会時にドーピング検査対象となれば避けることはできない。大会に出発する前には選手の持参薬を提出してもらい、禁止薬物が入っていないか1つ1つのチェックを行っている。前回まではドーピングに対する意識が高いとは言えない状態であったが、今回は病院処方薬でも、アンチ・ドーピング規定に合うことを確認して合宿に臨んでいた。本人家族ともドーピングについての知識がしっかりあったと推測され、強化指定選手を対象に実施している講習会や活動の成果を実感する機会となった。
 

これから世界での活躍を目指すには、アンチ・ドーピングの知識をさらに身につける自覚が必要となる。不注意で規則違反になってしまうことのないように活動を続けていきたい。

今後に向けて

今回は全体的に、規格の減点が非常に多い大会であった。特に基本である弓歩、馬歩、虚歩の減点が大変目立ち、1点以上の減点になった選手も多く見受けられた。ジュニアの国際大会では規格の基準が年々厳しくなっている傾向にあり、日本国内では減点されたことがないコード(63欄槍拿槍など)の減点も増えてきている。

また器械に関して、A組選手の器械(刀剣棍槍)の長さチェックが出場間際に厳しく行われ、日本の選手を含め、多くの選手が借り物の器械で出場することになった。

2005年版ルールブックに競技器械の長さ規定が明記されており、規格の基準も記載がある以上、今後も実施の可能性は大いにあると考えられる。日本チームで、あるいは国内大会でも対応を迫られていると感じた。

A組の競技種目では、第三套路と自選套路が混在しての競技で採点が行われた。その結果、第三套路でエントリーした選手の減点が多くなり、自選套路が有利になった感が否めない。規定動作のほとんどは規格動作であり、自選動作と比べて減点の可能性が大きく、その減点は演技レベルの得点で補える範囲ではない。今回、日本の選手は状況に合わせて調整を行うことで大いに健闘しメダルを獲得することが出来た。しかし今後、規定と自選の套路が混在する競技になった場合、日本チームはどのように対応するのかを早急に検討しておく必要がある。

01_第7回世界ジュニア選手権03_毛塚選手

毛塚来美選手・太極拳1位・太極剣1位

01_第7回世界ジュニア選手権04_毛塚選手演武

A組の太極拳両種目を制したのは今回が初

01_第7回世界ジュニア選手権05_大野選手

大野雅也選手・男子棍術2位

01_第7回世界ジュニア選手権06_林選手

林聖那選手・女子剣術2位

01_第7回世界ジュニア選手権07_香取選手

香取尚弥選手・太極剣2位

01_第7回世界ジュニア選手権08_中田選手

中田琉月選手・男子長拳1位

01_第7回世界ジュニア選手権09_中村選手

中村里香選手・女子棍術1位

01_第7回世界ジュニア選手権10_樋ノ口選手

樋ノ口大翔選手・42式太極剣2位

また、第三套路で成績を挙げるには難度動作と跳躍が必要不可欠であり、特に太極拳種目では、長拳選手以上のレベルの跳躍と着地をこなす必要がある。しかし日本チームではまだまだ力不足が目立ち、ジュニアの太極拳選手には早い時期からの難度練習開始が、今後の日本の大きな課題となる。

来年のJOC大会から新ルールが導入される機会に、国際大会に対応できるよう全てにおいて準備をしていく必要がある。

総評

ブラジルでの大会は、これまでで最も遠い国での開催となった。国際線を2回、ブラジル国内線を1回、合計3回の飛行機での移動があり、乗り継ぎを含めて30時間以上を要した。日本との時差は12時間あり大変な移動ではあったが、選手全員が自己管理に努め、怪我人や病人が出ることなく、日本チームは優れた成績を残し、全員無事に帰国できた事は大きな収穫であった。遠いブラジルまで来てくださったご家族の皆様の応援も、選手たちにとって大きな力になった。あらゆる面において支援いただいた日本連盟、応援してくださった全ての方々に感謝したい。

以上

参加国・地域別 獲得メダル数(套路種目)

順位 国・地域名 合計
1 中国香港 10 3 8 21
2 アメリカ 8 4 3 15
3 マレーシア 7 5 9 21
4 中国マカオ 4 6 2 12
5 日本 4 4 0 8
6 中国 4 0 0 4
7 シンガポール 3 6 5 14
8 イラン 2 8 6 16
9 インドネシア 2 8 5 15
10 韓国 2 2 2 6
11 ベトナム 2 1 2 5
12 ウクライナ 2 0 0 2
13 エジプト 1 3 0 4
14 カナダ 1 2 2 5
15 フランス 0 0 2 2
15 インド 0 0 2 2
15 カザフスタン 0 0 2 2
18 ベラルーシ 0 0 1 1
18 トルコ 0 0 1 1
  合計 52 52 52 156

日本代表選手成績一覧

No 2018
年齢区分
性 別 種 目 氏 名 所 属 出場種目と成績
1 A組 男 子 太極拳 香取 尚弥 神奈川県連盟 太極拳4位、太極剣2位
2 長拳 大野 雅也 千葉県連盟 長拳4位、刀術6位、棍術2位
3 女 子 太極拳 毛塚 来美 栃木県連盟 太極拳1位、太極剣1位
4 長拳 林  聖那 埼玉県連盟 長拳6位、剣術2位、槍術6位
5 B組 男 子 太極拳 樋ノ口大翔 岩手県連盟 太極拳4位、太極剣2位
6 長拳 中田 琉月 大阪府連盟 長拳1位、刀術6位、棍術5位
7 女 子 太極拳 森 風姫子 岩手県連盟 太極拳4位、太極剣5位
8 長拳 中村 里香 千葉県連盟 長拳5位、刀術4位、棍術1位
9 役員・コーチ 前東 篤子 選手強化委員会 副委員長
10 孔  祥東 ジュニア普及委員会 ジュニアヘッドコーチ
11 神庭 裕里 選手強化委員会 コーチ
12 丹井  均 同 コーチ
13 国際審判員 三船  英 審判委員会 副委員長