輝け!武術太極拳アスリート ~レジェンド選手紹介/市来崎直子~

市来崎 直子選手

太極拳との出会い

小学4年生の頃、兄が空手を習っていたことがきっかけで空手を習い始めました。

兄が通っていた空手道場は横浜中華街にあり、中華街のパレードで空手と太極拳の演武をみたことがきっかけです。

通い始めて2年程経った頃、空手の先生である三代正廣館長(日本太極拳友会会長)が太極拳の先生でもあることを知り、太極拳に興味を持つようになりました。

子供ながらに、太極拳のゆったりとした優雅な動きにとても惹き付けられたのを覚えています。

しばらくは空手の仲間と共に太極拳を両立していましたが、次第に太極拳の道へ一本にすることを決めました。

きっかけは太極拳を始めてまもなく小学校6年生になった頃、初めて中国へ練習しに行ったことでした。

生まれて初めての海外、親と離れプロチームの練習に参加させてもらいました。

短い訓練期間でしたが小さい自分にとって、何もかもが新鮮で刺激的で、太極拳の世界に益々惹き付けられ、いつか太極拳に携わる仕事に就きたいと思いました。

それから太極拳の道1本に絞り、日本代表を目指しました。

日本代表選手として

2005年から現在の自選難度競技がスタートすることになり、今までとは大きく違った内容に取り組むことになりました。

横浜中華街・媽祖廟での早朝太極拳を10年続ける

今まで全く跳躍動作をしたことがなかった為、全てがチャレンジの連続でした。

まずは体を変えるため筋力トレーニングを練習に取り入れ、週6回程練習に励みました。

19歳で日本代表入りし、新ルールになってから2年程経った頃、忘れられない怪我を経験しました。

慣れない動作に疲労が溜まり、頸骨疲労骨折をしてしまいます。

数々のオリンピック選手を診察しているナショナルトレーニングセンターの先生からは、「こんなに酷い状態は見たことない。選手として復帰するのは難しいと思う。」と告げられ、とてもショックだったことを覚えています。

当時、世界選手権の代表に選ばれていた為、そのまま試合に出場しました。

帰国後、引退するか復帰を目指すか今まで毎日のように練習していた日から1年程練習を休みました。

休んでいた期間、先生方や家族、仲間、生徒の皆さんの支えもあり復帰を目指すことにしました。

もう元のようには動けないかもしれないという不安もありましたが、応援してくれる方々の支えもあり必死にリハビリをしました。

復帰したときの試合は忘れられません。

またコートに立てた喜びと、多くの方に支えて頂いてコートに立てたことを強く実感し、自分が好きで始めた太極拳でいつか選手として必ず活躍した姿を見てもらいたいと今まで以上に思うようになりました。

1年のブランクは想像以上にとても大変でしたが、たくさんの方に支えられて2013年と2015年の世界選手権でメダルを獲得することができました。

引退、その後の活動

大学卒業後は選手として活動しながら、指導者としても活動を始めました。

自身の教室での普及活動や地域の方々など多くの方と交流させて頂く時間が次第に増え、多くの方に太極拳の素晴らしさを伝えることの楽しさ、難しさに改めてやりがいを感じ、2015年に引退する数年前から次第に引退を考えるようになりました。

2011年に横浜中華街シニアライフ研究会主催の「太極拳の集い」や「コンシェルジュツアー」という企画で太極拳の講師を勤めました。

選手時代から日本武術太極拳連盟の皆様をはじめ、先生方やたくさんの方々の支えがあり今があります。

選手としてコートに立たせて頂いた日々や素晴らしい環境で練習させて頂いたこと、遠征に行かせて頂いた多くの経験は今でも自分を支えてくれる財産です。

2015年には国体神奈川代表コーチに就任しましたので、これからは少しでも貢献できるように努めていきたいと思います。

まだまだ未熟者ですが、今まで経験し培ってきたことを忘れず、これから少しでも普及活動に貢献していきたいと思います。

市来崎 直子 ICHIKIZAKI Naoko
1986/3/17生 神奈川県横浜市出身
所属:神奈川県武術太極拳連盟 日本太極拳友会
主な競技成績・表彰:
小学4年生より三代館長のもとで空手道場に入門し、11歳で太極拳を始める。
ジュニアオリンピックカップ 総合太極拳1位等ジュニア選手として活躍後、2005年から日本代表となる。
高い身長と長い手足を生かした美しく優雅な太極拳で国際大会等で活躍する。
現在は指導者として活動しており横浜中華街媽祖廟にて行われる「太極拳の集い」の講師も行っている。
■ 2013年 全日本武術競技大会
自選難度太極拳 1位・太極剣 1位
■ 2013年 第30回全日本武術太極拳選手権大会
自選難度太極拳 2位・太極剣 1位
■ 2013年 第12回世界武術選手権大会 太極拳 銅メダル
■ 2014年 第31回全日本武術太極拳選手権大会
自選難度太極拳 2位・自選難度太極剣 1位
■ 2015年 第32回全日本武術選手権大会
自選難度太極拳1位
■ 2015年 第13回世界武術選手権大会 太極剣 銀メダル
■ 2016年 文部科学省 国際競技大会優秀者表彰 受章
■ 2015年 神奈川県国体コーチ就任

2015年の第13回世界武術選手権大会では夫婦で銀メダルを獲得

各イベントで夫婦での双人太極功夫扇を披露